『ミニオンズ』はキュートなキャラクターのおバカなギャグが楽しいアニメーション!

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『ミニオンズ』
7月31日(金)より、TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー
配給:東宝東和
©Universal Pictures and Illumination Entertainment
公式サイト:http://minions.jp/

 

 アニメーションが人気を博するためには、練り込んだストーリーや映像のクオリティの高さもあるが、なにより登場するキャラクターが魅力的なこと。ここに尽きる。
 もちろん、颯爽としたヒーローやヒロイン、際立った悪党なども忘れ得ぬキャラクターになりうるが、世代を超えて惹きつけられるのは、突き抜けた可愛らしさや間抜けさを誇るキャラクター。どちらかといえば、作品の笑いを受け持つコメディリリーフ的な存在が多い。
 その代表格が、世界的なヒットを誇るユニバーサル・スタジオの“怪盗グルー”シリーズのなかで、一度見たら忘れないキュートさを売りにしているミニオンたちだ。主人公グルーの子分として仕える彼らはひたすらおバカなギャグで場を和ます。バナナのような容姿につぶらな目、彼らにしか分からない言語を駆使して、ひたすらボスを支えるのだが、どこか抜けている。画面に出てくるだけで微笑ましく、とにかく憎めない。人気を博するのも納得できる存在なのだ。
 この人気を受けて登場したのが本作だ。シリーズのスピンオフの位置付けになるのか。謎の生物ミニオンの出自を明らかにする内容となる。アメリカでは7月10日に公開されるや凄まじいヒットを記録。7月23日現在で2億3952万ドルを超える興行収入を挙げている。シリーズを牽引する製作のクリス・メレダンドリとジャネット・ヒーリー、そして製作総指揮クリス・ルノーの狙い通り、ミニオンたちの人気の高さを証明することとなった。
 監督は『怪盗グルーの月泥棒 3D』からシリーズの演出を手がけてきたピエール・コフィンと『ラロックスおじさんの秘密の種』のカイル・バルダ。音楽はシンプリー・レッドのギタリストだったヘイター・ペレイラ。脚本は『長ぐつをはいたネコ』のストーリーを担当したブライアン・リンチが起用されている。ミニオンたちの歴史を紐解きつつ、時代にあわせたおバカギャグが満載。
 しかも挿入される音楽が心憎い。ビートルズ、ジミ・ヘンドリックス、タートルズ、キンクス、スペンサー・デイヴィス・グループ、ザ・フー。そしてドノヴァンまで、楽曲がすべてギャグになっているのだ。この面白さが分かるのは、ある程度、年齢を重ねたおとなだろう。キャラクターの可愛さを前面に押し出しつつ、ギャグを練り込んで、すべての世代に受ける要素を盛り込んだつくりとなっているのだ。

 ミニオンは人類が地球に登場する前から存在した生物だった。
彼らは集団で行動し、最強のボスに仕えることを本分としているが、“最強”は長続きしなかった。
 地球を治めるのが恐竜から人類に代わり、原始時代から古代エジプト、中世、大航海時代と最強の存在に寄り添い、ナポレオンやドラキュラなどに仕えてきたものの、いずれも弱点があって身を滅ぼしていった。
 ミニオンたちもボスを探すことに疲労困憊。南極の氷の洞窟のなかで生きる気力を無くしてしまっていた。
 ここの立ち上がったのがケビン、ボブ、スチュアートの3人組。最強・最悪の存在をみつけるべく、ミニオンの運命を背負って旅立つ。
やがて到着したのは1968年のアメリカ。フロリダのオーランドで催された“大悪党大会”に出席。女性大悪党スカーレット・オーバーキルを知るや、彼女の子分になるべくイギリスに渡り、彼女の命じるままにエリザベス女王の王冠を盗み出そうとする――。

 ミニオンたちが歩んだ歴史はギャグでつないで、スピーディに語り終えた後、本筋は熱い1968年を背景に進行する。反体制ムードが横溢していた時代はミニオンたちにとっては格好の舞台。当時のヒットソングに乗って、ギャグを連発していく。もともとミニオンのことば自体はほとんど意味不明ながら、意図は通じるという趣向。画面で展開する脱線ぶりを堪能すればいい。バナナを好きという設定もふくめて、ギャグは玉石混交だが、とにかく容姿が愛らしく、楽しくみていられる。屈託のなさが身上なのだ。
 エリザベス女王を徹底的におちょくり、アクションは太古の昔から盛り沢山。なによりロンドンせましと暴れまくるクライマックスはおかしい。スペクタクルとして見応え充分だ。
 最後には“怪盗グルー”シリーズにリンクするエピソードも織り込まれて、スピンオフの役目を全うする。これだけヒットすると、ミニオンたちのスピンオフは続きがあるかもしれない。

 声の出演は『英国王のスピーチ』のジェフリー・ラッシュがナレーションを務め、『しあわせの隠れ場所』のサンドラ・ブロック、テレビシリーズ「MAD MEN マッドメン」のジョン・ハムに加えて、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でアカデミー賞ノミネートされたマイケル・キートンが加わる豪華版。日本版はナレーションが真田広之、天海祐希にバナナマンのふたりが参加。こちらもゴージャスさでは負けていない。

 暑い夏に、何も考えずにかわいいキャラクターの活躍をただ楽しむ。たまには、こういう映画体験もありだと思う。