『RRR』は英国植民地時代のインドを舞台にしたシリアスな男と男の闘いの物語。熱狂の歌と踊りつき!

『RRR』
10月21日(金)より、新宿ピカデリー、グランドシネマサンシャイン池袋ほか)全国公開
配給:TWIN
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公式サイト: https://rrr-movie.jp/

 インド映画の面白さはもはや日本でも知られている。膨大な作品数を誇る映画大国、インド。製作された作品群のなかより厳選されたものが上陸するのだから、どれも見応え十分なのは当然だ。アクション、シリアス、コメディ、人間ドラマとジャンルも多岐に及ぶが、いずれも観客の期待に応えるべく工夫が凝らされている。

 なかでも大きな話題となり、日本でもロングランを記録したのが、VFXやCGを駆使して、伝説の戦士バーフバリの波乱万丈の軌跡をダイナミックに描いた歴史冒険ドラマ、『バーフバリ 伝説誕生』と『バーフバリ 王の凱旋』の2部作だった。勇猛果敢なヒロイズムと誇張に満ちた描写が若い世代にアピールした。あくまでも面白さとインパクトに重きを置く姿勢が日本でも口コミで人気を呼び、幅広く映画ファンにアピールしたのだ。2部作は本国のみならず世界的なヒットを飾った。

 この2部作を手がけた監督のS・S・ラージャマウリは、ハエに生まれ変わった男が愛する人を守る痛快譚『マッキー』で知られる。特撮技術を巧みに駆使して、エンターテインメントの王道を行くヒットメーカーだ。

 この監督が7200万ドルというインド史上最高の製作費をかけて生み出したのが本作である。インド独立のために立ち上がった実際の英雄、アッルーリ・シタラマ・ラーマとコマラム・ビームを主人公に、イメージをとことん膨らませ、まさに空前絶後のエンターテインメントに仕上げている。

 キャッチーではあるが奇妙なタイトルは、Rise(蜂起)、Roar(咆哮)、Revolt(反乱)という3つのことばの頭文字を並べたもの。かなり過激な印象だが、内容はふたりの男の友情と葛藤のストーリー。分かりやすい語り口と怒涛のアクションに彩られた仕上がりがインドはもちろん世界的にヒット。アメリカでもそのエンターテインメント性が高く評価された。

 出演は『バードシャー テルグの皇帝』のN・T・ラーマ・ラオ・Jr.がビームに扮し、『マガディーラ 勇者転生』にも主演したラーム・チャランがラーマを演じる。いずれも日本にあまりなじみはないが、キャラクターにピッタリとハマっている。ドラマ部分ではシリアスな演技を繰り広げつつ、アクションをみごとにこなし、おまけに朗々と唄い、激しいステップも軽々とこなす。女優陣が美しいのはインド映画の特徴だが、ここでは『ガリーボーイ』のアーリヤー・バットが存在感を際立たせる。

 共演は『パニッシャー: ウォー・ゾーン』のレイ・スティーヴンソン、『ライジング・ホーク 猛軍襲来』のアリソン・ドゥーディ。植民地で横暴にふるまうイギリス人を演じている。

 1920年代、インドがイギリスの植民地だった時代。イギリスの知事夫妻は穏やかに暮らしている部族の幼い娘を連れ去ってしまう。

 部族のビームは何とか娘を救うべく機を窺う。その事実を知った知事はインド人警官ラーマにビーム逮捕の特命を下した。有能なラーマはどうしても警察上層部になりたい理由があって引き受ける。

 ビームは整備士に成りすまして街に潜んでいた。ラーマはビームに近づくが、事故に遭った少年を救うために、ともに力を合わせることになる。それが縁でふたりは親友となるが、ともに目的を忘れたわけではなかった。

 まもなくふたりは敵同士として対決することになる――。

 全編、179分の長さだが、いささかも退屈させられることはない。まことに平易な描き方でストーリーが語られ、随所に目を見張るアクション、スペクタクルが織り込まれる。S・S・ラージャマウリは得意にするVFX、CGを巧みに取り入れ、ヴィジュアル・インパクト本位。見る者を驚嘆させる映像世界に終始する。 英雄譚にふさわしく、力強さを誇示したアクション、殺陣の数々に酔いしれることは必定。

 おまけに、ミュージカルシーンでは一転、むくつけき二人が軽快にステップを踏み、歌うのだから応えられない。サービス満点、インド映画の醍醐味がぎっちりと詰め込まれている。

 ストーリーがどのように転がっていくか、予断を許さない。タフでヒロイックな男たちの軌跡に翻弄される快感。どのシーンも迫力満点、見終わったときに満足感に包まれる。インド映画の楽しさを満喫できる快作である。