『パシフィック・リム:アップライジング』は巨大ロボットとKAIJUが戦うSFアクション大作の続編!

『パシフィック・リム:アップライジング』
4月13日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
配給:東宝東和
©Legendary Pictures/Universal Pictures.
公式サイト:http://pacificrim.jp/

 

2013年に製作されて話題を呼んだ『パシフィック・リム』は、日本のマンガやアニメーション、特撮映画に造詣の深いギレルモ・デル・トロが『タイタンの戦い』で知られるトラヴィス・ビーチャム(原案・脚本)と組んで、思いのたけをぶつけたSFアクション大作だった。

幸いなことに、世界各国でヒットを記録し、続編の製作が決定。デル・トロがプロデュースにまわり、テレビシリーズ「ヤング・スーパーマン」を手がけ「スパルタカス」の脚本や製作に関わったスティーヴン・S・デナイトが監督に挑戦している。第90回アカデミー賞でデル・トロ作品『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞、監督賞など4部門に輝き、ようやくデル・トロのおたく愛に対して一般の眼が開いてきた感じがする。本作を公開するのにベストなタイミングといえそうだ。

第1作で原案・脚本を担当したトラヴィス・ビーチャムが生み出したキャラクターをもとに、第1作から10年後の世界を設定。次代を背負う監督・脚本家として期待されているエミリー・カーマイケル、テレビシリーズ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」の脚本を担当したキーラ・スナイダー、『メイズ・ランナー』シリーズの脚本を担当したT・S・ノーリンにデナイトが加わって脚本を完成させた。

もちろん、みどころは巨大ロボット“イェーガー”と怪獣をそのままの日本語で表記したKAIJUとの壮絶な戦い。第1作では戦いの舞台は夜だったが、本作では白昼に行なわれ、しかもクライマックスの舞台は東京とくる。

瓦礫と化す未来都市東京で“イェーガー”がKAIJU相手に壮絶なバトルを繰り広げるのだ。怪獣映画ファンでなくとも血沸き肉躍る。破壊の醍醐味を満喫できる仕上がりとなっている。

出演は『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のジョン・ボイエガに、『スクランブル』のスコット・イーストウッドと『グレートウォール』のジン・ティエン。さらにオーディションで選ばれたケイリー・スピーニーとフレッシュな顔ぶれだ。第1作に引き続き菊地凛子が出演し、新田真剣佑もチラリ顔を出す。問答無用のアクションで押し通す、これもまたアトラクション・ムーヴィーの1本に入れたくなる、超大作だ。

 

環太平洋でのKAIJUとの戦争から10年、スタッカー・ペントコストの身を投げうった活躍によって人類は勝利を収め、つかの間、地球に平穏が訪れていた。

ペントコストの息子ジェイクは、パイロットとして高い資質があったが、偉大な父にわだかまりがあり、反抗して違法行為に手を染めていた。彼の自堕落な生活はメカニックに強い少女アマーラと出会ったことで一変する。違法行為で逮捕されたふたりは環太平洋防衛軍(PPDC)に送られる。

ジェイクは義姉のマコに促されて、PPDCのパイロット養成施設の教官となる。PPDCでは並行して中国企業の主導のもとで、ドローン・イェガーの導入が計画されていた。そんな折、正体不明の黒いイェーガー“オブシディアン・フューリー”が出現し、謎の暴走を始める。

誰が謎のイェーガーを操っているのか。さらに事態は急展開する。封印されていた裂け目が開き、KAIJUが3体出現。彼らは日本に向かっていた。ジェイクと教官の旧友ネイト・ランバートは、アマーラを含む若きパイロットたちを率い、イェーガー軍団としてKAIJUに立ち向かう。決戦の場は東京。凄まじい破壊の戦いが幕を開ける……。

 

基本的には偉大な父を持った息子の葛藤と成長というアメリカ映画の伝統的パターンに、戦争映画にはお馴染みのパイロットの卵たちの反目と団結を織り込み、後はひたすらアクションのつるべ打ち。とりわけイェーガーのアクションときたら、ただただ周囲を破壊する肉弾戦。痛快にして爽快。これは『ゴジラ』やテレビの「ウルトラマン」の迫力を刷り込まれた日本人ならではの感慨か。デル・トロの強いおたく愛に比べて、スティーヴン・S・デナイトの演出はあっさり味。とことんヴィジュアル・インパクト重視でイェーガー、KAIJUを暴れさせてみせる。

なかでもクライマックスの東京粉砕のシーンでは高層ビルをなぎ倒し、イェーガーもKAIJUも投げる、殴る蹴るの大盤振る舞い。凄まじい破壊力を見せつける。

みる者は何も考えずに派手な映像をみつめればいい仕組みだ。制作したレジェンダリー・ピクチャーズは2016年に中国の大連万達グループに買収されたこともあり、やたらに中国の先端企業や中国系俳優が登場しているのもご愛敬。中国系俳優の役どころもかなり重要なものになっている。

もっとも第1作から、日本のコミック、アニメーション、特撮映画のエッセンスを抽出した内容であることは、中国資本もさすがに動かしようがない。最後の幕の引き方をふくめ、SFアクションの王道をいく仕上がりである。

 

出演者ではジェイク役のジョン・ボイエガが核になって頑張っている。彼は出世作『アタック・ザ・ブロック』の頃からイギリスでは知られた存在で社会派問題作『デトロイト』にも出演していた。アメリカ映画界も注目のアフリカ系イギリス人である。この強烈な個性に対するのはさらりとした風情のスコット・イーストウッドがよくマッチする。ここにパワフルなジン・ティエンが加わって、菊地凛子をはじめとする第1作からの出演者とハーモニーを奏でる。いいキャスティングである。

 

とにかく堅いことをいわずに、日本の文化から生まれたKAIJUとイェーガーの暴れっぷりを堪能する。これが正解だ。