『WAR/バトル・オブ・フェイト』は見せ場の連続で息つく暇もない、インド製エンターテインメント!

『WAR/バトル・オブ・フェイト』
2026年1月2日(金)より、丸の内ピカデリー。新宿ピカデリー、グランドサンシャイン池袋ほか全国ロードショー
配給:ツイン
©YASH RAJ FILMS PVT. LTD. 2025
公式サイト:https://war-movie.com/

 日本でも世界各国からの映画が公開・上映されるようになって、映画ファンの眼も開けた感じがする。とりわけ情報や映像が瞬時に世界を駆け巡る状況となった現在、お国柄は技術的な問題より、描く内容を貫くセオリー、常識に反映されている。

 近年、躍進が著しい中国映画の愛国精神は鼻につくが、インド映画もお国柄は滲み出る。昔、インド映画の上映時間が長い理由は少しでも冷房の効いた劇場にいられることがサービスだと聞いたことがあるが、なるほど、1本の作品のなかにあらゆるエンターテインメント要素を網羅することが約束になっているかのようだ。

 本作はその好例と言ってもいい。位置づけとしては、2019年に製作されたスパイアクション『WAR ウォー!!』(日本公開は2020年)のシリーズ第2作にあたる。伝説のスパイ、カピールを主人公に、世界を股に駆けた壮大無比な冒険世界が映像に焼き付けられる。

 圧巻の活躍を描いた前作のヒットを受けて、原案のアディティア・チョープラー、脚本のシュリーダル・ラーガバンはさらなるスケールを求め、まさに世界各国を舞台に陸・海・空、空前絶後のアクション世界を構築している。世界で暗躍する悪の組織“カリ”に捨て身の潜入を試みる展開だ。

 監督に選ばれたのはアクション・アドベンチャー『ブラフマーストラ』が高く評価されたアヤーン・ムカルジー。きびきびした語り口で、次から次に見せ場を用意し、見る者をグイグイと惹きこんでいく。そのアクション、スタントの規模の大きさには舌を巻くばかり。今さらながらにインド映画のパワーに驚嘆させられる。

 潜入スパイ、カピールが赴くアジア、ヨーロッパに大々的にロケを敢行。CG、VFXもふんだんに使い、痛快感満載。とにかく口をアングリさせられるような殺陣、スタントが映像に焼き付けられる。潜入スパイであり続けるためには、大きな代償が必要であることを押さえつつ、敵役を含め万全の体制でストーリーを構築する。

 なにより『WAR ウォー!!』で人気爆発したリティク・ローシャンが引き続きカピールを演じ、円熟したヒーローぶりを披露する。この主人公に拮抗し、勝るとも劣らない吸引力を見せつけるのがN・T・ラーマ・ラオ・Jr.だ。あの日本でも爆発的に注目され、世界的なヒットを飾った『RRR』で強烈な個性を発揮したスターが、スリリングなスパイアクションでも凄まじい存在感を発揮している。

 かつて、カビールはあえて悪党になって犯罪世界に潜入。インド史上最大の悪役となった。

 ターゲットは世界で暗躍し、磁場を広げる巨大組織、“カリ”。この組織に入り込むために大きな代償を払うことになったが、カピールはあえて大悪人のそしりを甘んじる。

 事情を知らない官憲は、彼を最大の犯罪者と認定。特殊部隊士官のヴィクラム捜査官が捜査をすることになる。

 ヴィクラムとカピールは少年時代から因縁で結ばれた関係だった。ふたりの対決を紡ぎながら、事態は思わぬ展開をみせていく――。

 日本から幕をあける趣向に度肝を抜かれ、あとはローラーコースターに乗るごとく。次から次と繰り広げられるアクションとスタントに目が丸くなる。飛行する旅客機上の戦いやら列車上の攻防、モーターボートの追跡、カーチェイス。どれだけ詰め込めばいいのかと呆れるほど、盛り沢山の見せ場に彩られている。さらに『ローマの休日』などの名作にも目配りし、なにより冒頭は日本のやくざ映画をほうふつとさせるおかしさ。これだけではない。ちゃんとミュージカル・シーンも盛り込まれているのだ。まさにエンターテインメントのあらゆる要素が網羅されているといっても過言ではない。

 俳優陣もリティク・ローシャンが颯爽とヒーローを快演すれば、N・T・ラーマ・ラオ・Jrがギラギラとアクの強さを炸裂させる。ふたりの輝きのせめぎ合いが映画の魅力となっている。

 エンターテインメントの要素を余さず網羅した、これがインドの流儀だ。満腹状態でスクリーンを後にできる作品だ。