『宝島』は沖縄の歴史を振り返りつつ紡ぐ、躍動感に溢れた青春群像ドラマ。

『宝島』
9月19日(金)より、新宿バルト9、TOHOシネマズ日比谷、109シネマズプレミアム新宿、グランドシネマサンシャイン 池袋ほか、全国公開
配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメン
©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会
公式サイト:https://www.takarajima-movie.jp/

『るろうに剣心』シリーズで時代劇の殺陣に新風を吹き込み、いずれもヒットチャートに送り込んだ監督、大友啓史の意欲作である。

 考えてみれば大友監督はNHKの出身。在籍時代に連続テレビ小説「ちゅらさん」や「ハゲタカ」、「龍馬伝」など、現代劇から時代劇と、さまざまなジャンルのドラマに携わってきた。映画監督に転身してからも『ミュージアム』や『3月のライオン』2部作、そして『レジェンド&バタフライ』など、多彩な題材に挑んできた。

 本作に挑んだのは、「ちゅらさん」が1972年の日本返還後の沖縄を舞台にしていて、それ以前の社会を描かないと沖縄の人々の本当の気持ちを理解できないと考えたからだという。それから20年の月日を経て、真藤順丈の直木賞受賞作「宝島」に出会った。

 アメリカ統治下の沖縄で運命に翻弄された若者たちの姿をヴィヴィッドかつスリリングに描いた小説に魅せられた監督は、壮大なエンターテインメントとして描き出した。

 脚本は『死刑にいたる病』の高田亮と大友監督自身。綿密なリサーチを課して、25億円の予算のもとに製作に挑んだ。構想から6年、2度の延期を経て完成した作品は、エキストラ5000人を擁する超大作に仕上がった。191分の長尺がいささかも気にならない仕上がりとなっている。

 1952年、アメリカ統治下の沖縄で、米軍基地から物資を奪い、住民たちに分け与える”戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちがいた。年上のオンをリーダーにして、グスク、ヤマコ、レイを核とする一団だったが、大勝負を仕掛けた晩、オンが帰ってこなかった。

 6年後、行方不明のオンを探して、グスクは刑事になっていた。ヤマコは教師になる道を歩んでいた。レイは刑務所に入りやくざの道を歩む。

 それぞれが過ごす沖縄ではアメリカ兵を襲う“アメリカ狩り”が頻発し、アメリカ軍の飛行機事故もたびたび起きた。

 住民たちの間で基地反対が高まり、デモの熱が沸き上がる。反米の機運が高まっていく。さらに米兵が主婦を交通事故死させながら、無罪になったことが火に油を注ぐ。

 そしてコザの街で米兵が事故を起こす。逃げようとする米兵を住民が暴徒となって車を横転させる。騒ぎは大きくなり暴動と化してしまう。

 グスク、ヤマコ、レイはそれぞれの立場から20年に及ぶ時の流れを体験し、事件を目撃し、参加していった。1972年の日本返還を前にして、消えたオンの真相が明らかになる――。

 今も不条理に基地がある沖縄。あまりに理不尽な立場に追いやられている住民たちの状況にはひたすら頭を下げるばかりだ。沖縄を舞台にした作品に重い雰囲気が漂うのもこうした厳とした事実があるからだ。大友監督もそうした状況に向き合いつつ、あくまで特別な環境に追いやられた若者たちの群像ドラマとして紡ごうとする。

 日本ではない、戦争と隣り合わせの状況を強いられ、それでも若さで時代にぶつかっていった若者たちをヴィヴィッドに抽出し、その軌跡をパワフルに描いている。スケール大きく、時代を再現してみせる手腕はなかなかのものだ。なにより描かれる出来事には慄然とさせられるものの、過度に悲壮ぶったりはしていない。あの時代を生き抜いた世代と同じく、懸命な姿を浮かび上がらせる。

 グスク役の妻夫木聡、ヤマコ役の広瀬すず、レイ役の窪田正孝、オン役の永山瑛太をはじめ、俳優陣も印象に残るパフォーマンスを披露してくれる。いささかも退屈させられることなく、191分が過ぎていく。エンターテインメントとして出色だ。

 こうしたアプローチで沖縄を題材にした作品は珍しいのではないか。一見をお勧めする所以である。