『ジュラシック・ワールド 炎の王国』は恐竜が大挙して暴れまわる、王道エンターテインメント!

『ジュラシック・ワールド 炎の王国』
7月13日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国超拡大ロードショー
配給:東宝東和
© Universal Pictures
公式サイト:http://www.jurassicworld.jp/

『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』や『ランペイジ 巨獣大乱闘』をはじめとして、今年はエンターテインメントに徹した快作が目立つ。余分な理屈は語らず、ヴィジュアル・インパクト本位。ただひたすら面白さを追求する姿勢が潔い。こうした作品が次々と輩出しているのは喜ばしい限りだ。
なかでも本作はアクション、インパクトともに申し分のない仕上がり。アトラクション・ムービーとして観客を翻弄することに徹している。この腹のくくり方が嬉しい。
考えてみれば、もともと1993年にスティーヴン・スピルバーグとマイケル・クライトンが生み出したシリーズ第1弾『ジュラシック・パーク』から映画の“見世物性”を追求したつくりだった。今のことばでいえばアトラクション・ムービーとなるか。その軸をぶれさせることなく、本作に至っている。
一応、シリーズとしては5本を数えるが、シリーズを蘇らせたのは2015年に公開された『ジュラシック・ワールド』だ。2001年の『ジュラシック・パークⅢ』から14年の歳月を経て製作された前作は、飛躍的に進歩した特撮、3D技術を駆使しながら、恐竜たちが大挙登場する世界を創出。疾走する語り口でとことん面白く仕上げてみせた。世界中で大ヒットし、16億6898万ドルを超える興行収入を稼ぎ出したことも記憶に新しい(2018年6月現在で歴代5位)。
これほどの成績を収めたのだから、本作に対する期待度は否が応でも高まる。本作では、前作で演出力を知らしめたコリン・トレヴォロウが盟友のデレク・コノリーとともに脚本を書き、製作総指揮も担当。監督には『怪物はささやく』が高く評価されたスペイン人監督ファン・アントニオ・バヨナが抜擢されている。バヨナはトレヴォロウの世界観を踏襲しながら、恐竜たち満載。迫力に満ちたアクション世界を構築している。
前作に引き続きクリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワードが主演し、共演陣も『ベイブ』のジェームズ・クロムウェル、バズ・ラーマン製作総指揮のNetflix製作音楽ドラマ「ゲットダウン」で注目されたジャスティス・スミス。『プロメテウス』のレイフ・スポール、『裏切りのサーカス』のトビー・ジョーンズ、『アメリカン・ギャングスタ―』のテッド・レヴィンと、ヴァラエティに富んでいる。さらにシリーズではおなじみのジェフ・ゴールドブラムにB・D・ウォンも加わる豪華なキャスティングである。

コスタリカ沖イスラ・ヌブラル島のテーマパーク“ジュラシック・ワールド”事件から3年が経った。パークの監督官だったクレア・ディアリングは、今も島に残る恐竜たちを救うべく団体を設立し、幅広く活動を続けていた。
彼女の活動にロックウッド財団の運営者イーライ・ミルズが援助を申し出た。クレアは動物行動学の学者で恐竜を教育していたオーウェン・グレイディに協力を呼びかける。かつては恋人同士でもあったクレアとオーウェン、団体の若手メンバー二人で構成されたチームは、イーライ・ミルズが雇った傭兵軍団とともにイスラ・ヌブラル島に向かう。
島は火山が噴火寸前だった。恐竜たちが回収されるなか、オーウェンには可愛がったヴェロキラプトルのブルーを救いたい気持ちがあった。
火山が大噴火を始めた。溶岩が流出し、島を火の海に変える。ブルーと再会できたオーウェンだったが、傭兵軍団の恐竜回収の目的が別なところにあったことを知る。オーウェンとクレア、そして若手メンバーたちはイーライ・ミルズの陰謀を阻止するため、傭兵軍団に紛れ込んだ――。

冒頭に恐竜襲撃のサスペンスで観客をぐっとつかむあたりは、定番なれど、さすがの迫力。続いてジェフ・ゴールドブラム扮するイアン・マルコムが遺伝子工学によって生まれた恐竜たちの存在に警鐘を鳴らすシーンを用意して、これまでのシリーズと連なる作品であることを示してからは一気呵成の冒険世界に突入する。ファン・アントニオ・バヨナの語り口はスピーディで、無駄なところがなく、観客をグイグイと映像世界に惹きこんでいく。
とりわけのスペクタクルはイスラ・ヌブラル島の大噴火、さらに恐竜たちが逃げ惑う阿鼻叫喚の世界。灼熱の溶岩が島を覆い、さしもの恐竜たちも天変地異に成す術もない。この大迫力のシーンが惜しげもなく中盤に用意されているのだ。手に汗を握るシーンによってテンションがグーンと高まると、ここから最後までは息つく暇もない。恐竜たちの運命はどんな結末をみせるのか、詳細はいえない。人間の欲に翻弄されるのは恐竜の方なのだ。
人間がクローン技術によって生み出した恐竜たち。そこには倫理上の問題があるはずなのだが、科学者たちは往々にして先が見えず、企業家たちは儲けの対象としてしか判断しない。まさしく経済優先の現在の世界そのものの構図がストーリーに内包されているが、バヨナの演出は、メッセージは匂わせる程度。とことんインパクト主義、アクションの見せ場の連続で紡いでいる。

出演者の個性もさることながら、見ものは恐竜たちの勇姿。とことん精密にリアルにつくりあげられていることに驚嘆するばかり。あたかも実際にいるような思いになるのは、スタッフたちの努力の賜物だ。クリス・プラットの気のいい兄ちゃんイメージ、ブライス・ダラス・ハワードのちょっと抜けたところのあるキャリア女性ぶりで対抗するが、むしろ人間たちの方がカリカチュアされてみえる。それほど恐竜たちの存在感が際立っているのだ。随所に散りばめられた恐竜たちのアクションには目を見張るばかりだ。

なにより最後の趣向は予想を超え、本シリーズがまだまだ続くことを暗示している。映画はなにより見世物であることを実感させてくれる仕上がり。夏にふさわしい痛快、爽快、迫力いっぱいの作品である。