『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』は往年のホラー名作のリメイク・シリーズ第1弾!

『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』
7月28日(金)より、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
配給:東宝東和
©Universal Pictures
公式サイト:http://themummy.jp/

 

 アメリカ映画界は認知度の高い題材を、手を変え、品を変えて蘇らせる。アメリカン・コミックを原作にしたものなどは、短いスパンの間に、同じヒーローを違う俳優で演じた作品が妍を競う状況も生まれている。映画ならではのオリジナルストーリー、ヒーローで勝負するべきだとの正論も、興行成績を理由にされると大きなことはいえなくなる。やはり認知度の高い作品が圧倒的に上位を飾っているからだ。

 こうした状況から、旧作の再映画化の機運も高まり、リメイク、リブートなんてことばも頻繁に使われるようになった。メジャー映画社では往年のヒット作の見直しがはじまり、そうした潮流の中で生まれたのが“ダーク・ユニバース”シリーズである。

 1930年代に、ユニバーサル・スタジオの礎を築いたホラー映画、『魔人ドラキュラ』や『フランケンシュタイン』、『ミイラ再生』に『透明人間』といった作品を新たな発想と最新の映画技術で蘇らせる趣向。出演者にはトム・クルーズやジョニー・デップ、ラッセル・クロウ、ハビエル・バルデムといったビッグネームを起用することでも話題となっている。

 次世代に向けたエンターテインメントを生み出すという旗印のプロジェクトで、その記念すべき第1弾となったのが本作である。

 1932年に発表された『ミイラ再生』をもとに、まったく新しいアクション・エンターテインメントをつくる発想だが、1999年にスティーヴン・ソマーズが仕掛けた『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』が先駆けだった。この作品は世界的ヒットを飾り、シリーズ化されたことも記憶に新しい。主演したブレンダン・フレイザーのユーモア溢れるヒーローぶりもなかなかに魅力的だった。

 もちろん、“ダーク・ユニバース”シリーズを仕掛けたアレックス・カーツマン、クリス・モーガンは“ハムナプトラ”シリーズの存在は承知の上で、あえてこのプロジェクトに取り組んでいる。なにしろ“ダーク・ユニバース”の凄いところは、さまざまなモンスターたちをひとつの世界観のもとで紡ぐというスタンスに立っていることだ。たとえばドラキュラやフランケンシュタインの作品がつくられ、さらに『アベンジャーズ』のようにモンスターが一堂に介する趣向も考えられているのだという。さすが『スター・トレック』や『トランスフォーマー』の脚本やプロデューサーとしての手腕で知られるカーツマンと『ワイルド・スピード ICE BREAK』の監督・脚本をはじめ、“ワイルド・スピード”シリーズの脚本でメジャーとなったモーガンのコンビ、細工は流々である。

 原案はカーツマンに加え、『ドクター・ストレンジ』の原案や『パッセンジャー』の脚本を担当したジョン・スペイツ、『レイチェルの結婚』の脚本で知られるジェニー・ルメット(シドニー・ルメットの娘)が練り上げ、『ジュラシック・パーク』などのヒット作品に参加してメジャーな存在となったデヴィッド・コープ、『ユージュアル・サスペクツ』や『ワルキューレ』の脚本家クリストファー・マッカリー、さらに俳優出身で脚本に転進したディラン・カスマンの3人が脚本に仕上げている。これだけの脚本家たちが角突き合わせて磨き上げたストーリーはなるほど“ハムナプトラ”シリーズともオリジナルとも異なる、疾走するストーリーとなっている。監督は『People Like Us』やテレビシリーズで演出経験のあるカーツマンが務める。

 しかし凄いのは出演者である。おなじみトム・クルーズが主演を務め、『レ・ミゼラブル』のラッセル・クロウと競演する(クロウは“ダーク・ユニバース”世界のキーパーソン、ジキル博士を演じている)。さらに『キングスマン』のソフィア・ブテラ、『アナベル 死霊館の人形』のアナベル・ウォーリスが脇を固める。

 

 中世、ロンドンのとある場所。十字軍に従軍した修道士の棺に、妖しく輝くオシリス石が収められた。

 古代エジプト、王女アマネットは次期女王を約束されていたが、王に男の子が生まれたために反故にされる。怒ったアマネットは魔術を使い、死の神セトと契約を交わし、王と男の子を殺害。セトを蘇らせる儀式の途中で捕らえられ、都からはるか離れた地で、生きながらミイラの刑に処せられる。

 現代、イラクの地で、アメリカ軍関係者のニック・モートンと相棒のクリス・ヴェイルは古代の宝を探していた。激しい戦闘をかいくぐるふたりの前に、巨大な地下空洞が出現する。

 ふたりを追いかけてきた考古学者ジェニー・ハルジーと、地下に降りると封印された棺が仕掛けとともに置かれていた。なぜかモートンの脳裏には「私の選びし者」と語りかける美女の姿が浮かんだ。

 棺はロンドンに空輸されることになるが、大量のカラスが飛行機に襲い掛かり、ロンドン郊外で機は墜落するが、ハルジーだけが助かった。機は大破するが、なぜかモートンは死ななかった。モートンの前に死んだヴェイルが姿を現し、「俺たちはアマネットに呪われた、お前は選ばれた」と告げる。

 モートンはハルジーとともに棺を探す。アマネットは人間を襲いながら、次第にミイラから回復していく。彼女はオシリス石を取り戻すために、あえてロンドンに運ばせたのだ。彼女は完全なる復活とセトに捧げるべき“人間”を求めていた。

 やがて、モートンはアマネットと対決し、危機一髪のところをアマネットともども、謎の軍団に捕らわれる。

 この軍団こそがこの世に存在する悪、モンスターを研究する秘密組織プロディジウムだった。モートンは組織のリーダー、ヘンリー・ジキル博士と対峙することになる――。

 

 オリジナルでは生きながらミイラにされた高僧イムホテップが主人公となるが、21世紀は野心に燃えた王女がミイラとなって暴れまくり、男に呪いをかける展開に代わる。しかも行動は愛のなせる業ではない。あくまでも女王に慣れない怒りから端を発している。なるほど、オリジナルとは異なる発想。設定にとことん知恵を絞ったことが伺われる。

 さらに、スケールを広げるべく飛行機は墜落させるわ、ロンドン近郊に魑魅魍魎を集結させるなど、とにかく全編をサスペンスと恐怖でつなごうとする。アトラクション・ムーヴィーとして成立させるべく、あの手この手を駆使している。

 しかもトム・クルーズ演じる主人公は小悪党として登場し、ストーリーの進行とともにヒーローに変貌する設定。なるほど、年輪を重ねて、容姿も衰えつつある現在、単純な二枚目ヒーローではクルーズ自身も納得しない。彼は製作にも参画して意見を述べたというから、キャラクターに対しても思いが反映されているのだろう。クルーズのブランド・イメージを守りつつ、超自然的なキャラクターに追われる男を演じるとなれば、この結末しかない。

 それにしても驚くのは、モンスターを研究する秘密組織プロディジウムだ。なるほど、こういう組織を設定しておけば、以降、どんなキャラクターも同一世界上に登場させることができる。ましてリーダーを、二重人格のジキル博士に設定したことで、別なサスペンスも生まれてくる仕掛けだ。この組織がどんな活動を展開するのか、これから登場するジョニー・デップ主演の『透明人間』、ハビエル・バルデム主演の『フランケンシュタイン』が待ち遠しくなってくる。ジキル博士を演じるラッセル・クロウは善悪、いずれのキャラクターも迫力満点に演じるので、モンスターよりもよっぽど迫力が感じられる。

 

 本作は世界各国でヒットを重ね、世界の興行収入が3億8千万ドルを優に超えた。船出は順調。“ダーク・ユニバース”シリーズがこれからどんなアイデアで勝負をかけてくるか、楽しみに待ちたい。