
8月28日(金)よりTOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズ日比谷、109シネマズプレミアム新宿、新宿バルト9、新宿ピカデリーほか全国公開
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©2026映画『時には懺悔を』製作委員会
公式サイト:https://www.tokizan.jp/
日本映画界で個性を最も主張している監督となれば、中島哲也の名をまず挙げたくなる。CMの世界から出発して2004年の『下妻物語』で一躍注目を集め、ミュージカル仕立ての『嫌われ松子の一生』や『パコと魔法の絵本』を発表。2010年の『告白』は日本アカデミー賞において作品・監督・脚本の各賞に輝くなどセンセーションを巻き起こしたことは未だ記憶に新しい。
2014年には『渇き。』、2018年に『来る』を送り出して以来、本作が公開されるまでにかなり時間がかかってしまった。しかも本来であれば昨年に公開されるはずが、監督自身のハラスメント報道によって公開延期の憂き目にあった。なんとか公開にこぎつけてよかったと思うばかり。
本作は打海文三の同名小説の映画化。原作に惹かれた中島哲也が映画化を長年訴え続け、ようやく実現をみた。脚本は中島と『渇き。』や『来る』で参加した門間宜裕が書き上げた。中島監督自身、コメントで自分の気持ちが素直に出ていると語っている。伝えたいテーマの重さ、大切さを考えると監督としてのエゴを入れる余地はなかったという。監督として覚悟を決めた作品といえそうだ。
そうした思いのもと、キャスティングも演技派が結集している。『ドライブ・マイ・カー』の西島秀俊に『愛のむきだし』の満島ひかり。『小さいおうち』の黒木華に脚本家としても知られる宮藤官九郎をはじめ、柴咲コウ、佐藤二朗、役所広司。さらに監督でもある塚本晋也、片岡鶴太郎など個性的な顔ぶれが居並ぶ。
ある日、探偵が殺された。調査をすることになったのは元同僚で一匹狼の佐竹と助手の聡子。
ふたりは探偵が9年前に起こった新生児誘拐事件を調査していたことに行き着く。対象は失踪した明野という男と重い障害のある少年だった。
佐竹と助手は市営住宅に住む明野を監視する。明野は粗暴な男だったが、少年に対してはかいがいしく面倒を見ていた。ひとりでは何もできない少年の食事から排泄まで、ひとときも目が離せない少年の世話をする。
その姿を監視するうちに佐竹も助手も自分自身を見つめることになる。どちらも子供に対してそれぞれ苦い記憶を持っていたからだ。ふたりは事件の解決にどのように向き合うのだろうか――。
中島監督の容赦のない演出は今回も健在だ。だがその矛先は顔を拭ってきれいごとで終始する人間たちに向いている。親と子の関係は利害を超えたものであるはずなのに、それぞれのエゴが阻害する。本作では拗ね者の探偵と訳ありの助手が懸命に障害のある子供を生活させるクズ男を監視するうちに、それぞれ苦い過去に向き合わざるを得なくなる展開。監督はストレートにテーマに肉薄している。監督自身のハラスメント問題によって公開が1年遅れてしまったが、酷薄なセオリーで押し通す現実社会を振り返る意味でも、公開が実現できたことを喜びたい。
出演者はいずれも熱演だが、とりわけ明野役の宮藤官九郎の文字通り全身を駆使しての演じっぷりには脱帽するばかり。心に響く存在感を画面に焼き付けている。
中島監督のストレートな思いが作品から立ち上る作品。一見をお勧めしたい仕上がりとなっている。