『ヌーヴェル・ヴァーグ』は1950年代後半、フランスの“新しい波”の映画人を称えたラヴレター。

『ヌーヴェル・ヴァーグ』
7月10日(金)より。ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:AMGエンタテインメント
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公式サイト:https://nouvellevague-movie.com/

 インディペンデント映画からメジャー作品まで、アメリカ映画界においてリチャード・リンクレイターほど多様な軌跡を歩む人はいない。

 ひも解けば、1985年、テキサス州オースティン映画協会を設立して映画界に名乗りを上げ、1988年に監督デビュー。2作目「Slacker(原題)」がサンダンス映画祭で絶賛され、続く『バッド・チューニング』が米国内で大ヒットを飾った。

 さらにイーサン・ホーク&ジュリー・デルピー主演の『恋人までの距離(ディスタンス)』がベルリン国際映画祭の銀熊賞(最優秀監督賞)に輝いて、インディペンデント界を代表する存在となった。メジャーに招かれて『ニュートン・ボーイズ』、『スクール・オブ・ロック』が大ヒットを記録した。

 ここで認知度は一気に高まったが、再びインディペンデントに戻り、『恋人までの距離(ディスタンス)』の続編『ビフォア・サンセット』と第3弾「ビフォア・ミッドナイト」(13)を手がけた。そして出演者たちが12年間ひとつのキャラクターを演じた『6才のボクが、大人になるまで。』を発表。ベルリン国際映画祭の最優秀監督賞(銀熊賞)を獲得した。

 その他にも、実写映像をデジタル・ペインティング加工した『ウェイキング・ライフ』や『スキャナー・ダークリー』といった作品を送り出し、興味の赴くまま、多彩な作品に挑んでいる。

 近年は海外の協力も積極的といわれ、自由な活動をするリンクレイターが。本作では遊び心いっぱいに1950年代後半にフランスで台頭した“ヌーヴェル・ヴァーグ”の映画人にオマージュを捧げている。

 フランソワ・トリュフォー、クロード・シャブロル、ジャック・リヴェット、エリック・ロメールなどなど、若い監督が輩出。ロケ影中心、同時録音、即興演出などの手法を駆使して時代に呼応した作品を生み出した。

 リンクレイターはこのヌーヴェル・ヴァーグ時代に強い思いいれがあり、その時代を生きてみたいとの憧れがあった。

 その願いをかなえたのが本作ということになる。本作では1959年、ジャン=リュック・ゴダールが『勝手にしやがれ』を監督した製作現場にカメラを持ち込み、自由闊達な監督ぶりを映像で再現してみせる。そこにはヌーヴェル・ヴァーグの連中と一緒に過ごしたいとのリンクレイターの切なる願いが感じられる。

 盟友のフランソワ・トリュフォーに先を越されたジャン=リュック・ゴダールはカイエ・

 カイエ・デュ・シネマ誌の映画批評家として知られていたが、自らも監督になるべく、プロデューサーの提案したトリュフォーのプロットを了承し、『勝手にしやがれ』の製作に入る。

 主演は兵役から戻ってきたばかりのジャン=ポール・ベルモンド、相手役にはアメリカ女優ジーン・セバーグを配する。

 スタッフの決定も型破りならば、撮影現場はさらに輪をかける。出演者、スタッフを煙に巻くような演出ぶりに毎日が驚きの連続だった――。

 当時の映像スタイルを再現したモノクローム画面は時代を再現するためVFXも導入するこだわりをみせつつ、リンクレイターは嬉々として『勝手にしやがれ』の逸話を焼き付ける。トリュフォーやロベルト・ロッセリーニをはじめ当時、活躍した映画人が次々と顔を出す豪華さ。それらすべてを容貌のよく似た人々が再現してくれるのだから応えられない。当時のフランスの熱気を存分に堪能させてくれる。

 ジャン=リュック・ゴダールと親交のあったミシェル・ペタンとローラン・ペタンの制作の下、リンクレイターの長年の協力者であるヴィンス・パルモ、ホリー・ジェントが脚本化、レディシア・マッソンがフランス語に訳して、全編、ほぼフランス語の台詞が繰り広げられる。さながら、リンクレイターが『勝手にしやがれ』撮影現場を違う角度から撮影している感じである。ジャン=リュック・ゴダール役のギョーム・マルベック、ジーン・セバーグ役のゾーイ・ドゥイッチ、ジャン=ポール・ベルモンド役のオーブリー?デュランなど、いずれも容姿に似ているところで選ばれたというが、子細に見ると微妙かな。

 遊び心満点の作品として楽しむのが正解だろう。とりわけ『勝手にしゃがれ』公開時に衝撃を受けた身にとってはなおさらである。