
6月19日(金)より、TOHOシネマズ日本橋、丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国公開
配給:松竹
©米澤穂信/KADOKAWA ©2026映画「黒牢城」製作委員会
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/kokurojo-movie/
2000年の『回路』でカンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞に輝き、2020年の『スパイの妻<劇場版>』がヴェネチア国際映画祭を獲得。黒沢清はヨーロッパを中心に支持を集め、世界に知られた映画人の位置を確立している。本作のプレミア上映をカンヌで行なったことも注目された。
本作は黒沢監督が初めて挑む時代劇である。米澤穂信による第166回直木賞受賞同名作を監督自身が脚本化、生き馬の目を抜く戦国時代を舞台にした本格ミステリーの世界に挑戦している。時代考証を凝らしながら、犯人を探し出す王道の展開である。
何よりも豪華なキャスティングに驚かされる。本木雅弘を軸に菅田将暉、紅一点は吉高由里子さらに青木崇高、Snow Manの宮舘涼太、柄本佑、ユースケ・サンタマリア、渡辺いっけい、近藤芳正、坂東龍汰、加えてオダギリジョーも顔を出す。ここまで個性的な顔ぶれが一堂に介するなんて、近頃、稀な贅沢さである。
頃は風雲急を告げる戦国時代、織田信長の横暴な戦略に対して異を唱えた荒木村重は籠城を決行する。血気盛んな家臣、従う態度を取りながら腹に一物ある家臣たちを諫めながら、荒木は迷っていた。
織田の密使として城を訪れた、軍師の黒田官兵衛を牢に監禁するが、城内で少年が殺される事件が発生。その後も怪事件が続発する。
容疑者は密室と化した城内にいる家臣や身内。
城外には敵軍、城内には裏切り者という状況のなかで、追い詰められた荒木は、黒田に協力を仰ぎ、事件の解決に挑んだ――。
いささかの油断もできない城内で、緊迫感に満ちた映像が紡がれる。黒沢清は本格ミステリーそのものの語り口で終始していく。戦国時代を背景にしながらも、基本は城内の腹の読み合い。本木演じる荒木と黒田官兵衛役の菅田将暉が探偵役となって、犯人をあぶり出していく展開となる。犯人の正体が比較的、分かり易いにしろ、あくまでオーソドックスなエンターテインメントとして体裁を取っている。
原作は連作小説のかたちをとったものだが、黒沢清の脚本は巧みにひとつの流れに収斂させている。荒木と家臣たちの油断できないやりとり、一方で妻千代保とのほっとする瞬間が荒木を和ませ、事件の相談をした黒田の慧眼ぶりに舌をまく。荒木の話を聞きながら巧みに事件の核心に迫るあたり、なるほどと感心させられる。菅田将暉と元木雅弘の丁々発止の演技合戦に拍手を送りたくなる。
製作費の嵩む作品とあって、黒沢清監督は正攻法に徹した感がある。エンターテインメントに徹して、時代劇も充分にこなせることを証明してみせた。
出演者では本木雅弘が誠実な主君を体現し、菅田将暉が喰えない軍師を熱演するのをはじめ、芸達者たちが与えられた役柄を好もしく演じている。
時代劇の楽しさとミステリーの面白さを併せ持った作品。見て損のない作品だと断言したい。注目あれ。