
6 月 19 日(金)よりTOHO シネマズ日比谷、TOHOシネマズ新宿、kino cinema新宿、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか全国ロードショー
配給:ビターズ・エンド
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公式ホームページ:https://www.bitters.co.jp/soudain/
第79回カンヌ国際映画祭は3本の日本映画がコンペティション部門に出品されるという異例の展開となった。それだけ日本には海外からも注目される監督が多いという証明かもしれないが、結果としては本作が女優賞に輝くというかたちだった。
本作は、濱口竜介監督の新作である。『ドライブ・マイ・カー』ではカンヌ国際映画祭脚本賞、アメリカ・アカデミー省の国際長編映画賞に輝き、『偶然と想像』はベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員大賞)。『悪は存在しない』ではヴェネチア国際映画祭を手中に収めるという、華々しい受賞歴を誇る存在となれば、海外の熱い注目も頷ける。
日本、フランス、ベルギー、ドイツによる共同製作というかたちをとり、5年の歳月を費やした新作は大半がフランス語のダイアローグで構成されている。
原作は宮野真生子、磯野真穂が著した同名作品。がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者の宮野真生子と、人類学者の磯野真穂が交わした20通の往復書簡から成っている作品だ。この原作に惹かれながらも、どのように映像化するか悩んだ末に、監督は偶然に出会ったフランスと日本、ふたりの女性の交流に託して映像化することに思い至る。
片やフランス発祥の高齢者介護技法「ユマニチュード」のディレクター、片や日本人演劇演出家。ふたりの出会いと交流を濱口監督が繊細に紡いでいく。脚本はほとんどがフランス語で展開。濱口監督と共同脚本のルディムナ玲亜のコラボレーションが光る。
出演は『エルELLE』や『ベネデッタ』などで知られる実力派、ヴィルジニー・エフィラ、モデル出身で『ウルヴァリン:SAMURAI』、『マンハント』で注目され、『沈黙のさらに艦隊』などで活躍する岡本多緒。このふたりが友情を育むヒロインを演じる。
さらに『敵』で健在ぶりを示した長塚京三が朗々とフランス語の台詞を披露するのをはじめ、『愛のあしあと』のジャン=シャルル・クリシェ、『他人の血』のマリー・ピュネルなどが脇を固めている。
介護施設「自由の庭」でディレクターをしているマリー=ルーはユマニチュードなる介護技術を浸透させようと努力しているが、ベテラン介護士たちとはうまくいっていない。
翌日、公園で演出家の森崎真理と俳優の清宮吾朗に出会ったマリー=ルーは真理から舞台のチラシをもらう。
介護施設でベテラン介護士とトラブルを起こしたマリー=ルーは上司から休息を勧められる。突然できた時間にとまどい、思いついて真理の舞台に出かける。
舞台は吾朗のひとり芝居。「近づいてみたら誰もまともな者はいない」というテーマが語られる。
舞台に強い印象を受けたマリー=ルーは上演後の質疑応答から真理がガンで余命半年であ濱口ることを知る。
マリー=ルーは真理の人となりに強く惹かれ、そこからふたりの濃密な交流がはじまった――、
上映時間は3時間16分であっても、まったく長さを感じさせない。余命半年の真理とマリー=ルーの軌跡を、濱口監督は細やかに描きだす。介護の現場で苦闘するマリー=ルーが真理と交流することで、少しづつ「生きることの意味」を考えるようになる。一方で真理も自らの運命に正直に生きることで、人生を曇りなく全うすることができる。監督の語り口は両者の化学反応をくっきりと浮かび上がらせる。
途中、長塚京三にフランス語の舞台を朗々と演じさせるところも嬉しいが、なんといってもヴィルジニー・エフィラと岡本多緒のコラボレーションが素晴らしい。ふたりの対照的で聡明なキャラクターを、監督は巧みに描き分ける。カンヌの審査員が二人に賞を授けたのも納得がいく。
濱口作品のなかでも惹きこまれる仕上がり。この3時間16分はは見る価値が十分にある。お勧めする所以だ。