
4月17日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ新宿、kino chinema新宿,渋谷シネクイントほか、全国ロードショー
配給:ギャガ ユニバーサル映画
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公式HP:https://gaga.ne.jp/song_sung_blue/
「唄マネミュージシャン」、「ものまねタレント」という存在はどこかペーソスを感じさせる。本物のマネを極めることに勤しむあまり、オリジナリティを失いがちになるからだ。似ている域に達する存在は数多くいる。ただ単にマネをするのではなく、自分らしさをいかに反映させるかが肝要となる。
本作は「唄マネミュージシャン」として活動してきた男の実話をもとにしている。日本と違って広大な領土のアメリカではそこかしこに「わが町の……」がいる。みな歌のうまさでは傑出しているがどこか本物ではない“哀しみ”が漂う。
本作でスポットライトを浴びるのはニール・ダイアモンドのそっくりさん。ニール・ダイアモンドは、日本ではそれほどスーパースターとはみなされていないようだが、アメリカではエルヴィス・プレスリーと並び称されるほどの大歌手。ヒット曲も「スウィート・キャロライン」や本作のタイトルになっている「ソング・サング・ブルー」などなど、数多い。1960年代後半から1970年代、1980年代半ばまで、白人層を軸に圧倒的な支持を集めた。ジャンルでいうとソフトロックといえばいいのか。唄マネミュージシャンが登場しても全く違和感のないアーティストである。
監督のクレイグ・ブリュワーは『ハッスル&フロウ』や『ブラック・スネーク・モーン』など、通好みのひねった作品で知られている。前者がチンピラのラッパー、後者が初老のブルースマンを主人公に据えて、底辺のリアリティを音楽とともに浮かび上がらせた。音楽にこだわりを持つブリュワーは、グレッグ・コースのドキュメンタリーから、主人公となるニール・ダイアモンドのそっくりさんの感動的なストーリーを知ったという。
脚色にあたっては、ストーリーを膨らまし、ダイアモンドのヒット曲を散りばめながら、感動的な愛の物語にまとめ上げた。
ブリュワーはキャスティングにあたって歌唱力と演技力を併せ持つ存在を求めた。白羽の矢が立ったのが『レ・ミゼラブル』や『グレイテスト・ショーマン』などのミュージカルで美声を披露し、アクションスターとしても知らぬ者のいないヒュー・ジャックマン。さらに『あの頃ペニー・レインと』や『ライフ・ウィズ・ミュージック』などで地道に演技力に磨きをかけているケイト・ハドソンを配して、万全の布陣。どんな曲でも見事にこなすふたりの熱唱が映画の魅力をさらに倍加している。
アメリカのミルウォーキーで、歌まねミュージシャン“ライトニング”としてステージに立つマイクはスターになる夢は叶わぬまま、車の整備工の副業をしている。
ある日、マイクは同じ歌まねミュージシャンのクレアと出会い、彼女の歌声に心を奪われる。
クレアと意気投合したマイクは、二人でチームを組もうともちかける。彼は尊敬するがゆえにニール・ダイアモンドの歌まねはしてこなかったが、クレアはマネではなく自分の解釈で歌えばいいと提案され、ニール・ダイアモンドのトリビュートバンドを結成しようと閃く。
バンドネームは“ライトニング&サンダー”。
クレアとの結婚が、マイクをさらに幸運へと導いていく。ライトニング&サンダーの評判は日に日に上がり、地元で大人気のバンドとして TV でも紹介されるようになった。さらにパール・ジャムのボーカル、エディ・ヴェダーから前座を頼まれる。
このアイデアが大当たりで客席には熱狂の渦が巻き起こり、新たなファンを獲得するが、想像もしなかった悲劇が、彼らに襲いかかる──。
基本的には夫婦の奮闘ストーリーといえばいいか。アメリカ中西部の庶民たちの哀歓を細やかに描き出す。クレイグ・ブリュワーの分かり易い語り口のもと、成功のとば口まで来た夫婦の機微がサラリと紡がれる。ジャックマンとハドソンの演技は巧みで。決して若くはない男女の心の触れ合いがくっきりと浮かび上がる。
もちろん、最大の魅力は歌唱シーンにある。ステージ上で懸命に歌いきるパフォーマンスの熱さが、ダイアモンドのおなじみの名曲の数々と相まって、ぐいぐいと見る者に迫ってくる。ブリュワーの力の入れ方は半端ではない。
急転直下の展開になるが、こちらは事実を基にしているとなれば納得するしかない。人生は思わぬことが起きるものだ。本作でハドソンは第98回アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされた。歌声も含め素晴らしい存在感を示してくれた。これは一見をお勧めしたい。