『ピクセル』は、世界的に知られているレトロ・ゲームのキャラクターが暴れまわる、奇想天外SFアクション!

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『ピクセル』
9月12日(土)より、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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公式サイト:http://www.pixel-movie.jp/

 

 かつて喫茶店やゲームセンターで人々を熱狂させた“スペースオンベーダー”や“ギャラガ”、パックマン“、ドンキーコング”といった、ゲーム創世記に鮮烈な印象を残したキャラクターたちが3DやIMAX、MX4Dの実写画面に登場して大暴れする――本作の面白さをひとことことで表現するならこうなる。
 1970年代末から1980年代にかけて、ゲームに燃えまくった時代の記憶が蘇ってくる世代はもちろん、レトロなキャラクターを新鮮に感じる若い世代にとっても嬉しい企画である。この抜群のアイデアを発想したのはフランスのパトリック・ジーン。彼が生み出した同名短編映画をもとにしている。8ビットのゲーム・キャラクターたちがニューヨークを襲い、物体をキューブ状のブロックに変えるというヴィジュアル・インパクトの新鮮さで、ネット上では24時間に100万回再生される人気を博した。
 この短編をもとにアイデアをさらに膨らまし、ストーリー化したのは『ウェディング・シンガー』のティム・ハーリヒー。この原案から、彼と『Black & White/ブラック&ホワイト』のティモシー・ダウリングが脚色にあたっている。
 映画は1982年にNASAが宇宙に向けて地球のカルチャー映像を宇宙に打ち上げたという事実をもとにした展開となる。異星人が映像のなかにあるゲームをみて、なぜか誤解し、ゲーム・キャラクターに変貌して攻めてくる。この危機を救うのが1980年代にゲーセンでならした、ゲームを熟知するオタクたちという設定だ。
 監督は『ホーム・アローン』や『ハリー・ポッターと賢者の石』などで知られるクリス・コロンバス。1980年代に話題を集めた『グーニーズ』や『ゴーストバスターズ』をはじめとする奇想天外なアクションコメディに対する思いを込めて、インパクト主義の演出を繰り広げている。
 出演は『ウェディング・シンガー』のアダム・サンドラーが自らプロデュースを兼ねる入れ込みぶりをみせたのをはじめ、『アナと雪の女王』でオラフの声を担当したジョシュ・ギャッド、テレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」のピーター・ディンクレイジ。さらに『モール★コップ』のケヴィン・ジェームズに加えて、紅一点『M:i:Ⅲ』のミシェル・モナハンまで、多彩な顔ぶれである。
 とはいえ、もちろん最大の主役はゲーム・キャラクターたちだ。“ギャラガ”、“アルカノイド”、“センチビート”、“パックマン”、“ドンキーコング”、“スペースインベーダー”のキャラクターたち、さらにはテトリスのブロックまでが“ピコピコ”音とともに実体化し、暴れまわる。

 かつてアーケード・ゲーム世界大会で優勝を争い、そこで負けたことが後の人生に影響し、今では冴えない中年となっているブレナーは、妻にも逃げられ、ホームシアターの取り付けを生業にしている。
 取り付けに向かった先で、トラブルになり、憤然としているときに今は大統領となっている親友のクーパーから、至急ホワイトハウスに来るように電話がかかる。
 急行すると、会議が開かれていた。グァムの空軍基地が襲われ、人や物がぼろぼろとキューブ状に崩壊したというのだ。その敵の映像はまごうことなく“ギャラガ”だった。
 ブレナーはかつて神童と呼ばれたゲーム仲間レイモンソフと再会する。彼は独自に情報を掴んでいて、グァムの襲撃は異星人によるゲームを模しての“宣戦布告”だといいきる。ゲームは3回、負けるとゲームセット。これを異星人は踏襲している。グァムで一度負けた。残り2敗する前に、エイリアンを倒さねばならない。
 しかし、クーパーは失政続きで人気が急降下中。軍隊の派遣を躊躇しているうちに、インドのタージ・マハルが“アルカノイド”によって崩壊された。もはや猶予はない。クーパーはふたりのゲーマーに命運を託す。
 ロンドンのハイド・パークに来襲した“センチピード”をようやく撃退したふたりに、異星人が“パックマン”でニューヨークを襲うという報が入る。ブレナーはかつて敗れた恨みを捨て、かつての世界チャンピオン、ブラントをチームに加えると、ニューヨーク市街に現れた巨大なパックマンに戦いを挑んでいく――。

 多少、間尺に合わないことはご愛嬌。キャラクターのインパクトをシンプルに楽しむのが正解だ。かたちとして、中年になって自信も誇りも失いかけた男たちの矜持復活のストーリー。笑いはサンドラーをはじめとする芸達者コメディアンに任した格好で、コロンバスは往年のコメディよろしく、あくまで発想の面白さを重視した演出を心がけている。スケール感のある世界を背景に、セリフでくすぐりながら、目を見張るアクションで勝負する寸法。いささかご都合主義で無邪気過ぎる語り口ながら、ゲーム・キャラクターの楽しさが全てを圧している。
 クライマックスはすべてのゲーム・キャラクターたちが一堂に介して、人類と戦いまくる展開。8ビットのキャラクターたちが3Dの映像に変換し、その動きもゲームに忠実にするという技術上の困難もクリアーしている。かつて小さい画面で楽しんできたキャラクターが大画面に登場して襲いかかってくる楽しさは一見の価値がある。かつてのゲーマーが喜ぶ小ネタをストーリーに持ち込み、日本発のキャラクターたちが結集した趣向に嬉しくなる。往年のゲーマーたちに向けただけの作品ではないが、知っているとより楽しめるのも確かである。

 出演者ではブレナーに扮したサンドラーはむしろ控えめ。もっぱらレイモンソフ役のギャッドと、クーパー大統領役のジェームズがとぼけた笑いを提供している。ブラント役のディンクレイジ、ヴァイオレット役のモナハンも個性を発揮しているが、やはりパックマンやドンキーコングの迫力には負ける。

 かつて両替した100円玉を握りしめ、ゲーセンで熱くなった世代には、昔を振り返る材料となるか。固いことをいわないで、おバカを楽しめる人にお勧めしたい。