『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』はトム・クルーズの意地が際立つアクション快作!

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『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』
8月7日(金)より、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
© 2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:http://www.missionimpossiblejp.jp/

 

 トム・クルーズは映画人として秀でた存在だと、つくづく思う。
 なによりもセルフ・プロデュース術に長け、スター俳優としてのセールス・ポイントを常に更新し続けている。一方で『マグノリア』や『ワルキューレ』、『ロック・オブ・エイジズ』のような新生面を拓く異色作を選びつつ、毎年、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のようなヒットを狙える作品を欠かさないあたりの戦略が真骨頂だ。私生活では宗教問題や、歴代妻たちとのスキャンダルがあるものの、仕事人としてはまことに際立った活動ぶりだ。
 多様な作品歴のなかでも、この『ミッション:インポッシブル』シリーズはとりわけ彼のプロデューサーとしての能力が発揮されている。自らが立ち上げた製作プロダクションの第1作として選んだ『ミッション:インポッシブル』のヒットを受けて、シリーズ化したわけだが、1作毎に監督を変えることで新味を打ち出す戦略を採用。その人選も、ブライアン・デ・パルマやジョン・ウー、J・J・エイブラムス、ブラッド・バードといった、個性に富んだ存在を積極的に選んでいる。おかげでデ・パルマはヒットメーカーに返り咲き、ウーはアメリカ映画界で認知された。またエイブラムスはテレビ界から映画界に楔を打ち込むことになり、バードはアニメーションのみならず実写作品でも秀でた存在であることを証明してみせた。
 そうした流れを受けて、このシリーズ最新作で監督に起用されたのはクリストファー・マッカリー。クルーズとは既に2012年の『アウトロー』でチームを組んでいるし、脚本家として『ワルキューレ』、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』にも参加している。これまでのように新しい才能をシリーズに導入するのではなく、気心の知れた存在をあえて起用することで、シリーズの原点回帰を図ろうとする作戦か。クルーズ自身、マッカリーの才能に心底惚れぬいているとコメントしている。
 本シリーズの特筆すべき点は、回を重ねるごとにクルーズが披露するアクション、スタントのスケールがエスカレートしていることだ。前作ではドバイの超高層ビル“ブルジュ・ハリファ”でのスタントが話題になったが、今回も人後に落ちない。ロシアの軍用機の扉に貼りつき、時速400キロ、上空1500メートルで行なうスタントからはじまって、息継ぎなしでの6分以上の潜水、ウィーン国立歌劇場の屋根でのスタント、モロッコでのバイクのチェイスなどなど、全編、スリリングなシーンが相次ぐ。そのすべてをクルーズ自身が演じているのだから驚くほかはない。
 年齢が50歳代となって、さすがにクルーズの容色に衰えがみられるが、それを補ってあまりあるほど肉体を酷使してスターとしてのイメージを輝かせる。ここにクルーズの矜持をみることができる。どんなに困難なシーンでも自らが演じることによって存在感をアピールしてみせる。1980年代のジャッキー・チェンが作品で披露した体技にも匹敵するようなスタントにあえて踏み込むクルーズの勇気と意地に脱帽するとともに、彼のスターでいようとする意思に拍手を送りたくなる。
 共演は『ハート・ロッカー』のジェレミー・レナーに『宇宙人ポール』のサイモン・ペッグ、『コン・エアー』のヴィング・レイムスなどのレギュラー陣に加えて、『ヘラクレス』のレベッカ・ファーガソン、『プロメテウス』のショーン・ハリス、『アリスのままで』のアレック・ボールドウィンなどがキャスティングされている。

 化学兵器回収のミッションに成功したものの、大混乱を引き起こしたイーサン・ハントのチームに対して、公聴会が開かれる。CIA長官はハントが所属するIMFの解体を進言。公聴会はこれを了承した。
 同じ頃、ハントはIMFのロンドン支部で謎の男の襲撃を受け拉致されていた。まさに拷問を受けようとする刹那、軍団の一員イルサに生命を救われ、謎の男が率いる組織“シンジケート”の存在を知る。
“シンジケート”を壊滅する決心をしたハントだったが、CIAによって国際手配を受けてしまう。地下に潜ったハントは、CIAに組み込まれたかつての仲間ベンジーに助けを求め、ウィーンに赴くが、“シンジケート”の目論みを阻止することができなかった。イーサンはウィーンで再会したイルサとともに、“シンジケート”の目的と成立の謎を暴くべく、重要リストが秘められたカサブランカに向かう――。

 題名にある“ローグ・ネイション”とは“ならず国家”の意味。各国のエージェントを選りすぐった組織“シンジケート”を指している。脚本も担当したマッカリーは、アクションとスタントの見せ場で目を惹きながら、この組織の存在理由を知るために奔走するハントの行動をスリリングに綴っていく。一種、謎解き的な趣向も込めながら、胸に思いを隠したイルサをはじめ、登場するキャラクターをそれぞれ魅力的に浮かび上がらせる手法。きびきびとした語り口でストーリーを牽引している。
 もちろん、“シンジケート”とイルサに翻弄されながらも、真相に肉薄するハントの一途なヒロイズムが画面にくっきりと焼きつけられるのはいうまでもない。それぞれの圧巻の見せ場でアクションヒーローとしての資質がいかんなく発揮されるのだ。

 敵の首領を演じるハリスのイメージがむしろ地味なのも凄味が出ているし、ファーガソン演じるイルサも色香より有能なエージェント然としているのが好印象。レギュラー陣ではベンジー役のペックが笑いを受け持って大活躍するのも楽しいし、レナーは胸に一物の腹芸をみせる。CIA長官役のボールドウィンの参加によって、シリーズは新たな局面を迎えるか、興味は尽きない。

 ここまでサービス精神に徹したアクション・シリーズは稀だ。どこまでも画面で躍動し、目を見張るシーンを演じきるクルーズに感心しつつ、シリーズの次作を待ち望む次第。スタントマンを使わずに自分でやるとなると、年齢を考えると、身体の無理がきくのはそんなに長くない。少しでも早くに製作してほしいものだ。