『GODZILLA ゴジラ』は日本発の怪獣が縦横に暴れまくる、アメリカ映画得意の3Dスペクタクル・アクション超大作!!

GODZILLA
『GODZILLA ゴジラ』
7月25日(金)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国東宝系ロードショー
配給:東宝
©2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC
公式サイト:http://www.godzilla-movie.jp

 

 1954年にスクリーンに登場し、強烈なインパクトを残したゴジラは、間違いなく日本を代表する怪獣である。このキャラクターを中心にした日本映画は2004年までに28を数え、その雄姿は日本人の心に鮮烈に焼きついている。
 日本に限らず、ゴジラはポップ・カルチャー・アイコンとして世界各国にも知られていて、1998年には『インデペンデンス・デイ』のローランド・エメリッヒによって映像化されたことがある。もっとも、エメリッヒ版はゴジラが単なる恐竜として描かれていたため、ファンには評判が芳しくなかった。
 本作はそうした流れを受けて、オリジナルの第1作をもとにゴジラのイメージを固め、凄まじいヴィジュアル・インパクトで勝負をかける。なにより嬉しいのはゴジラが人知を超えた畏怖すべき存在、人間の善悪など歯牙にもかけず、その咆哮とともに破壊の限りを尽くす存在として設定されていることだ。もちろん、敵対する怪獣も登場する。そうした圧倒的な存在を前にして人間たちはどのように対処していくか――が、徹底的なシミュレーションのもとに映像化されていく。
 監督は、2010年の『モンスターズ/地球外生命体』が高く評価された、英国出身のギャレス・エドワーズ。長編監督デビューとなる同作で、脚本・監督・撮影・キャラクターデザインを一手に引き受けた力量が認められ抜擢されたエドワーズは、実はゴジラ映画をこよなく愛して育ったという。映画化にあたっては『エクスペンダブルズ』などで知られるデヴィッド・キャラハムが原案を書き、『バットマン・ビギンズ』のデヴィッド・S・ゴイヤーを経て、新鋭のマックス・ボレンスタインが『グリーンマイル』のフランク・ダラボンなどの協力を得てまとめあげた。
 出演は『キック・アス』のアーロン・テイラー=ジョンソン、『マーサ、あるいはマーシー・メイ』のエリザベス・オルセン、『イングリッシュ・ペイシェント』のジュリエット・ビノシュ、『アルゴ』やテレビシリーズ「ブレイキング・バッド」で知られるブライアン・クランストン。さらに『ブルー・ジャスミン』のサリー・ホーキンス、『グッドナイト&グッドラック』のデヴィッド・ストラザーン。日本代表として渡辺謙に加え1954年の第1作にも出演した宝田明も顔を出している。

 1999年、フィリピンの採掘現場で日本の芹沢博士とグレアム博士が巨大生物の痕跡を発見する。
 同じ年、日本の原子力発電所で働くジョーとサンドラのブロディ夫妻は謎の振動と電磁波を探知する。炉心の調査に向かったサンドラは大きな揺れに見舞われ、ジョーは安全のために彼女を残したまま防護壁を締めねばならなくなる。そして原子力発電所は倒壊する。
 15年後、ブロディ夫妻の息子フォードはアメリカ海軍の一員となって、妻子とともにサンフランシスコで暮らしていたが、父のジョーが日本で拘束されたと聞き、日本に向かうことになる。父は原子力発電所事故の究明に取り憑かれていたのだ。
 フォードは父の熱意にほだされて、立ち入り禁止地域である発電所のある地域に侵入する。そのなかでふたりは意外な事実を知るが、パトロールに検束される。発電所の跡地につくられた研究施設で、ふたりは芹沢博士たちに引き会わされるが、そのときに想像を絶する事態が勃発。ジョーが倒れた後、フォードは芹沢博士から巨大生物の秘密について聞かされる。しかし、真のカタストロフィはここからはじまった……。

 アメリカ超大作の例にもれず、本作の特撮技術のみごとさはいうまでもない。冒頭の巨大生物の痕跡を示すシーンから原子力発電所事故のサスペンスにつなぎ、次から次と見せ場を用意しながら、ミステリー的興味でぐいぐいとストーリーに惹きこむ。まことに巧みな設定である。いかにしてゴジラが登場し、敵対する怪獣と戦うかは作品で実感されたい。
 フォードを中心に、対処に追われる人間の視点で事態の推移が綴られていくわけだが、“自然の畏怖の象徴としてのゴジラ”という、オリジナルのポリシーはきっちりと守られている。この軸がぶれていないから、日本の風景やインテリアが多少、妙でも気にならない。エドワーズは人間たちの対応をきわめてリアルに紡ぎだし、クライマックスに向けて心地よく疾走する。
 なにより、ゴジラの容貌がオリジナルの延長戦にいるのが嬉しい。敵対怪獣の迫力とあいまって、クライマックスは息もつけない。手に汗を握る迫力に満ちている。これが3D映像で堪能できるのだから応えられない。
 1954年のオリジナルは水爆実験が盛んに行われた当時の状況のなかで、いわば自然の反撃というかたちでゴジラが設定されていた。このアメリカ版でも、科学で自然をコントロールできると考える、傲慢な人間たちに対する自然の反撃の象徴としてゴジラが登場している。原子力発電所の問題を含めて、日本人が考えるべき問題を、このエンターテインメントは内包しているのだ。

 出演者ではフォードを演じる『キック・アス』とは打って変わったテイラー=ジョンソンのタフガイぶりに驚かされるのをはじめ、溌剌とした妻役のオルセン、ことの重大さに苦悩する芹沢博士役の渡辺謙、ジョー役のクランストンなどが、手堅い演技ぶりを披露してくれる。もっともサンドラ役のビノシュ、グレアム博士役のホーキンスなどは、あまり見せ場が用意されていないのが残念だが、存在感だけは残しているか。それにしても豪華なキャスティングといえよう。

 総製作費、1億6000万ドル。アメリカ国内ですでに1億9850万ドル、世界各国で2億9200万ドルの興行収入を挙げている。日本はどの程度のヒットを飾るだろうか。夏にふさわしい超大作である。