『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』は、ゲームの楽しさを新たなかたちで満喫させてくれる冒険ファンタジー!

『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』
8月2日(金)より、全国東宝系劇場にてロードショー
配給:東宝
©2019「DRAGON QUEST YOUR STORY」製作委員会 ©)1992 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
公式サイト:https://dq-movie.com/

 

今は離れてしまっているが、かつてゲームにかなり熱中したことがある。「ゼルダの伝説」、「ファイナル・ファンタジー」に「ドラゴンクエスト」など、数え上げたらきりがないほど。既にいい大人になっていたが、RPGを中心に寸暇を惜しんで、入れ込んだ記憶がある。確かに当時はゲームが生活の一部と化していた。

そうした思い出が蘇ってきたのも、ゲームを扱った映画作品に出会ったからだ。

先日公開された『FINAL FANTASY XⅣ 光のお父さん 劇場版』では、登場人物と同じように、かつて子供たちと毎晩ゲームに燃えた楽しい記憶がまざまざと蘇った。確かにモニターを見つめながら「ファイナル・ファンタジー」にどれほど時間をかけたことか。

さらに最近もスマートフォンで折に触れて「Pokémon GO」を楽しむ身としては『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』に惹きつけられた。1998年の『劇場版ポケットモンスター/ミュウツーの逆襲」をフル3DCGでリメイクしたこの作品は、なによりゲームで覚えたばかりのポケットモンスター・キャラクターが総登場したのが嬉しかった。

 

そして真打、本作の登場である。題名からも分かる通り、RPGの代名詞とでもいうべき「ドラゴンクエスト」シリーズの映像化。初の3DCGアニメーション作品となる。

題材に取り上げたのは名作の誉れ高い「ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁」だ。親子3代に渡って魔王と戦う、大河ドラマのような展開のもと、愛と絆のストーリーが展開する。これを原案に『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズでおなじみの山崎貴が脚色。彼が総監督になって『STAND BY ME ドラえもん』でチームを組んだ八木竜一と花房真を監督に迎えて完成させた逸品だ。もちろん、原作者の堀井雄二は監修を引き受け、音楽はすぎやまこういち。シリーズの雰囲気はそのままに、映画作品ならではの映像で「ドラゴンクエスト」世界が新たに構築されている。

制作プロダクションは白組とROBOT。なにより声の出演者の豪華さに驚かされる。『るろうに剣心』から『バクマン。』、『いぬやしき』まで、さまざまなキャラクターを演じ切る佐藤健に、NHKテレビ小説「ひよっこ」のヒロイン有村架純、同じくNHKテレビ小説「あさが来た」のヒロイン波瑠。さらに『FINAL FANTASY XⅣ 光のお父さん 劇場版』の坂口健太郎と『50回目のファーストキス』の山田孝之に加えて、ケンドーコバヤシ、安田顕、古田新太、松尾スズキ、山寺宏一、井浦新、賀来千香子、吉田鋼太郎まで、個性に富んだ顔ぶれが結集している。

 

少年リュカは父親のパパスとともに、ゲマが率いる魔物たちに連れ去られた母マーサを探す旅を続けていた。

だが敵に遭遇し戦いを繰り広げるなか、パパスはリュカの目の前で無念の死を遂げてしまう。

それから10年。故郷に戻ったリュカはパパスの日記を発見。「天空の剣と勇者を探し出せば、マーサを救うことができる」という父の遺志を継いで、リュカは再び冒険の旅に出る。

彼の行く先にはさまざまな試練が待ち受け、さらに大富豪の娘フローラと幼い頃から知っているビアンカのいずれかを妻にする選択を課せられる。リュカは敵と対するまでまだまだ長い年月を必要とした。宿敵ゲマを倒すまでに三代にわたる戦いが繰り広げられていく――。

まさしく大河ロマン、波乱に富んだストーリーがてきぱきと語られる。スライムのスラりんは愛らしく、リュカは凛としつつも愛嬌があり、フローラもビアンカも可愛らしい。キャラクター、ストーリーとも、飽きさせずに最後までぐいぐいと引っ張っていく。日本の3DCGアニメーションの水準の高さを実感できる仕上がりだ。

山崎監督はゲームの映画化に当初は慎重だったという。ゲームはユーザーの感情移入が半端ではなく、すべての人を満足させることが難しいと考えたのだが、映画ならではのアイデアを閃く。このアイデアは作品の面白さを殺ぐので明かせないが、なるほどその手があったかと舌を巻く。多分、賛否はあるだろうが、確かに映画でしか表現できない際立った発想ではある。

山崎監督は本作を青春映画、成長物語としてのロードムービーに仕立てたかったとコメントしている。色々な試練、冒険を通じてリュカが成長していく姿を描きたかったのだという。そのために数多くの人にリサーチし、ゲームの記憶に残った場面、趣向を集めて回った。「ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁」を愛した人々の熱い声が作品に結実しているのだ。

声の出演者もそれぞれのキャラクターにふさわしい。リュカ役の佐藤健はなるほど青春キャラクターから人間として成熟するプロセスをきっちり表現しているし、ビアンカ役の有村架純もタフで清純なキャラクターをさらりと演じている。俳優それぞれがみごとに役になりきっている。

 

再びゲームに熱中していた頃が思い起こされる。あの頃、どうしてあれほど熱中していたのか。年齢を重ねたゆえのペーソスを実感するひととき。ともあれエンターテインメント性十分で夏にふさわしい、懐かしい世界の新しい作品である。