『神と共に 第1章:罪と罰』はアジア各国で大ヒットを記録した韓国製冥界エンターテインメント!

『神と共に 第1章:罪と罰』
5月24日(金)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー 『神と共に 第二章:因と縁』は6月28日(金)より同劇場にてロードショー
配給:ツイン
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公式サイト:http://kamitotomoni.com/

 キム・ギドクやボン・ジュノといった個性の強い監督の作品のみならず、近年はアクションやスリラー、ホラーなどのエンターテインメントにも好調さをみせる韓国映画界から、際立ったユニークさで勝負したアクション・ファンタジーが登場した。
 本作は人気漫画家チュ・ホミンの同名ウェブコミックの実写映像化で、描き出されるのは“あの世”、つまり死後の世界。冥界を舞台にした一大アクション・スペクタクルなのだ。『カンナさん大成功です!』をはじめ、奇想天外な題材を手掛けることで知られるキム・ヨンファが脚本・監督。膨大な量の原作を大胆に刈り込み、映画ならではのワンダーに満ちた世界を構築した。韓国映画史上初となる2部構成にチャレンジ、同時制作を果たしたことでも話題となった。
 本作は第1弾とあって、さながら舞台となる冥界めぐりの感がある。殉職した消防士が三人の使者に誘われて冥界をまわる展開で、異様な怪物やら地獄絵図やらが登場する展開となっている。本作が本国ばかりかアジア諸国でヒットした理由は冥界に対する共通の理解があるからか。アメリカ映画の宇宙などを舞台にしたSF世界とは一味違う説得力をもってアジアを席巻した次第。
 しかも出演者が実力派揃い。『チェイサー』や『哀しき獣』、『テロ,ライブ』などで個性を発揮したハ・ジョンウを筆頭に、『私は王である』のチュ・ジフン、『優しい嘘』のキム・ヒャンギ、『猟奇的な彼女』のチャ・テヒョン、『後宮の秘密』のキム・ドンウクなどなど、ヴァラエティに富んだキャスティングが組まれている。

 火災現場で少女を救いながら、消防士のジャホンは壮絶な殉死を遂げた。彼の死の瞬間、冥界の3人の使者が現われ、ジャホンを冥界に誘う。
 人は亡者になると、49日間の間に7つの地獄で裁判を受けなくてはならない。殺人、怠惰、ウソ、不義、裏切り、暴力、天倫という嫌疑を晴らした者だけが、現世に戻れるというのだ。3人の使者は、亡者を護る弁護士カンニムとアシスタントのドクチュン、警護担当のヘウォンメク。彼らも49人の亡者を転生させれば人間に生まれ変わることができる。
 ジャホンは“正義の亡者”貴人にランクされていたので3人の使者も安心していたが、裁判を受けるうちに、実直な正義の亡者であるはずのジャホンの意外な過去が次々と暴かれる。やがてジャホンの弟スホンが死んで怨霊となり、冥界と下界を巻き込んだ壮絶な戦いに発展していく……。

 CGやVFXを存分に取り入れて、冥界という異世界の壮大なスペクタクルに仕上げたことに拍手を送りたくなる。異様な怪物が出てくるのに加えて、私たちの意識のなかに刷り込まれている地獄のイメージがくっきりと映像化されていく。本能的な恐怖感とでもいいたくなる、ざわざわした怖さが画面に紡がれていく。
 映画として大胆に枝葉を払いながらも、あくまでウェブコミックのイメージに忠実に映像化したと、キム・ヨンファはコメントしている。まるでアミューズメントパークのアトラクションのように、次から次へと地獄の様相が現われ度肝を抜かれる。ファンタジーといっても、アクの強さが身上。怖いもの見たさで惹きこまれる。
 もちろん、韓国映画の常としてストーリーには強烈な感情が織り込まれる。ここではジャホンの生涯のさまざまな局面のエピソードから、単にきれいごとではない真実があぶりだされる展開。決して裕福ではない庶民の生活が描かれ、ジャホンの思いが明らかになっていく。さらに韓国は“恨”の国だけあって、怨霊の強烈な力が映像にアピールされる。キム・ヨンファのスピーディな語り口で一気呵成。最後の最後まで見る者を引っ張っていく。
 本作は先に述べたように2部作の第1弾として製作されている。6月28日に劇場公開される『神と共に 第二章:因と縁』では3人の使者の生前の因縁が明らかになっていく。本作が地獄世界のイントロダクションだとすれば、第2弾は3人の使者が選ばれた理由が明らかになる。本作を見ると続編の興味は確実に増す。見ずにはいられなくなる。

 出演者では弁護士カンニムを演じたハ・ジョンウがさすがの貫禄をみせれば、ヘウォンメク役のチュ・ジフンは颯爽とカッコよさをアピール。ドクチュン役のキム・ヒャンギは可憐さと聡明さを披露するなど、3人の使者はそれぞれの持ち味をきっちり見せてくれる。ジャホン役のチャ・テヒョンの善良さと相まって、それぞれの個性がきっちりと色分けされる(ちなみに第2弾では3人に加え、『新感染 ファイナル・エクスプレス』や『犯罪都市』などでおなじみのマ・ドンソクが競演する)。

 驚きに満ちていて、映像に圧倒される。本作を見ると第2弾は無視できなくなるはず。まずはお勧めの作品だ。