『シャザム!』は明るく楽しいスーパーヒーローが弾けるアクション・アドヴェンチャー!

『シャザム!』
4月19日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/shazam-movie//

 コミックから生まれたスーパーヒーローも昨今のように数が増えると、製作側は差別化が必須となる。アメリカでは二大コミック会社、マーベルとDCコミックがしのぎを削ってスーパーヒーロー作品を量産している。コミックでの認知度は高いといいながらも、個性に富ませ、映画ならではの趣向を用意しなければ、なかなか超ヒットにはつながらない。
 アメリカで4月5日に公開され、3日間で5675万ドルという興行収入を記録した本作は、ヒーローの個性がなにより異色である。
 なにせ主人公は身寄りのない少年ビリー。ある日、謎の魔術師から“選ばれし者”と認められ、スーパーパワーを授けられてしまう。「シャザム!」と唱えると筋肉ムキムキのスーパーヒーローに変身するのだ。つまり肉体は鋼のようだが、頭脳は少年のままというヒーローなのだ。
 身体は大人だが、本質は子供という設定はペニー・マーシャルの傑作『ビッグ』をほうふつとするが、こちらはスーパーヒーローだ。ビリーは友人のヒーローマニアのフレディと一緒になって、スーパーヒーローになったらやってみたい悪ふざけをとことん実現させる。
「シャザム!」という魔法の言葉は、S=ソロモンの知力、H=ヘラクラスの強さ、A=アトラスのスタミナ、Z=ゼウスのパワー、A=アキレスの勇気、M=マーキューリーの飛行力という6つの絶対的パワーの略。これだけの力を持ったビリーがいかにしてヒーローとしての資質に目覚めていくかが綴られていく。
 コミックをもとに溌溂とした脚本に仕上げたのは『ジャックと天空の巨人』のダーレン・レムケと『アース・トゥ・エコー』のヘンリー・ゲイデン。ふたりでアイデアを煮詰め、最終的にゲイデンが脚本にした。監督はスウェーデン出身で『ライト/オフ』や『アナベル 死霊人形の誕生』で注目されたデヴィッド・F・サンドバーグ。ホラーばかりかと思ったら、本作でユーモアの資質に長けていることを証明してみせた。ドキュメンタリーやアニメーションも手掛けたこともあるというから、さらにサンドバーグのフィールドは広がりそうだ。
 出演はブロードウェイ・ミュージカル「シー・ラヴス・ミー」でトニー賞にノミネートされ、テレビシリーズ「CHUCK/チャック」のチャック役でもおなじみのザッカリー・リーヴァイ。これに『キングスマン』のマーク・ストロングが強力な仇役で個性を発揮する。
 さらにテレビシリーズ「アンディ・マック」のアッシャー・エンジェル、『ビューティフル・ボーイ』のジャック・ディラン・グレイザーといった若手が絡み、『ブラッド・ダイヤモンド』のジャイモン・フンスーが顔を出すキャスティングだ。

 身寄りのないビリーはヒーローマニアのフレディといつもつるんでいたが、ある日、突然現れた魔術師に「選ばれし者よ」と認められ、スーパーパワーを与えられる。
「シャザム!」と唱えるだけで、スーパーヒーローに変身するのだ。変身したビリーはフレディとともにスーパーパワーの無駄使い。とことん悪ノリして遊びまくる。だがDr.シヴァナという怪人が彼に襲いかかる。彼の狙いは呪文のことば。未だ力を把握していないビリーと戦い、フレディを誘拐してしまう。
 事ここに至って、ビリーは唯一の友人であるフレディを救うためにスーパーヒーローとしての“正しき資質”を、身をもって学ぶことになる――。

 純粋で精神力の強い少年がスーパーヒーローに選ばれるという設定はエリートや高貴な血を継ぐ存在と異なり、庶民派というか誰しもが憧れるものだ。主人公のビリーは等身大、適度に軽薄で少年らしいセンスの持ち主。スーパーヒーローになってやってみたこともいかにもおバカで笑わせる。つまりはこのヒーロー、やることなすことが子供っぽく、ギャグになっている。それでいて嫌みにならないのは子供らしい純な性格だからだ。
 デヴィッド・F・サンドバーグの演出はノリがよくスピーディ。笑えるギャグを散りばめながら、ヒーローに成長するまでの過程を軽やかに紡ぎだす。ホラーで評価された人ながら、インパクト十分のギャグでつなぐセンスはなかなかのものだ。この成功により、サンドバーグの前途はさらに明るいものとなった。

 出演者では、どこまでも子供っぽい変身したヒーロー役のザッカリー・リーヴァイがとぼけた味を全開すれば、Dr.シヴァナ役のマーク・ストロングはクールな表情を変えないが、どこかに可笑しさを秘めたキャラクターを怪演してみせる。両キャラクターの対決がギャグになっているのだから楽しい。

 全編、楽しさ満載。本作のヒーローはスーパーヒーローになったらやってみたいことをすべて実現してみせる。シリアスなヒーローも見応えがあって結構だが、童心そのもののヒーローだって軽やかに楽しい。全米の評価が「最高に楽しい」というのも頷ける仕上がりだ。