『キングダム』は中国にロケーションを敢行した、アクション満載の歴史エンターテインメント!

『キングダム』
4月19日(金)より全国東宝系にてロードショー
配給:東宝
©原泰久/集英社©2019映画「キングダム」製作委員会
公式サイト:https://kingdom-the-movie.jp/

 現在の日本映画界ではコミックを原作にした映画作品はもはや珍しくない。ヒットしたコミックは軒並み映画化される状況。当然、コミック原作作品を得意にする映画監督も出てくる。コミックのイメージを突きつめ、臨場感に溢れた動きの映像に還元する。『GANTZ』や『アイアムアヒーロー』、『いぬやしき』などを送り出した佐藤信介はその代表格といえる。
 本作は『BLEACH』に続いて佐藤信介が送り出した、原泰久の同名傑作コミックの映画化である。原作は週刊「ヤングジャンプ」にて連載され、現在までに単行本が53巻まで刊行。累計発行部数3800万部(2019年1月現在)を記録している。紀元前、中国春秋戦国時代を背景に、大将軍になるという夢を抱く戦災孤児の信と漂、中華統一を目指す嬴政(のちの秦の始皇帝)の人生が交錯し、波乱万丈のストーリーが紡がれていく。
 脚色は原作者自身と『累‐かさね‐』で知られる黒岩勉、さらに佐藤信介も加わってアイデアを練りこみ、映画にふさわしい見せ場を随所に設けた、波乱万丈のストーリーに仕上げた。
 撮影にあたっては、日本映画の常識を超えたスケールで、日本各地のみならず中国浙江省をでロケーションを敢行。壮大華麗なオープンセットのもとで、超ド級の戦闘が再現された。佐藤監督は既に『アイアムアヒーロー』の韓国で海外ロケーションは経験済み。日本国内では成しえない、迫力ある殺陣、モブシーンを作品に遺憾なく盛り込むことができる。佐藤監督はそうした圧巻の見せ場をそこかしこに散りばめながら、人間の意志の力を謳い、さまざまな思惑が交錯する人間模様、ロマン溢れるストーリーに仕上げた。本作は佐藤信介にとっても画期的な作品となった。
『羊と鋼の森』や『斉木楠雄のΨ難』などで進境著しい山崎賢人が信に扮し、漂と嬴政の二役を『リバース・エッジ』の吉沢亮が演じる。さらに長澤まさみ、橋本環奈、大沢たかお、本郷奏多、満島真之介、高島政宏、要潤などなど、豪華な顔ぶれが一堂に介している。

 紀元前、中国春秋時代。戦災孤児・信と漂は幼い頃より大将軍になるという夢を抱き、剣術の腕を磨いた。ある日、漂が大臣の目に留まり、王宮に召し上げられた。
 やがて剣術の練習を怠らない信の前に深く傷ついた漂が現われ、地図に記した場所に向かうように伝える。力尽きた漂を残して地図に書かれた場所に向かった信はそこで、嬴政(のちの秦の始皇帝)と出会う。
 彼は、王位を狙う嬴政の弟、成蟜のクーデターから逃れて、ここに身を潜めていた。信は嬴政の側につき、少ない仲間とともに波乱万丈、激烈な戦いに身を投じることになる――。

 佐藤監督のメリハリの利いたスピーディな語り口が、信の成長と戦いの記録を痛快に浮かび上がらせる。この手の歴史エンターテインメントは間延びする作品が少なくないのだが、本作はとにかく見せ場が多く、最後の最後まで飽きさせない。ストーリーのそこかしこに設けられた冒険のアイデアが面白く、グイグイと惹きこまれる。
 しかもクライマックスは王宮に待ち受けるクーデター軍に対して、少ない人数での総力戦。それぞれが持前の技を発揮してバタバタと敵を倒していく趣向だが、この手の作品にありがちな間延びしたところがなく、きびきびと合戦シーンをつないでいる。しかも、中国にロケーション敢行した成果は、どこまでも広がる大地で披露できるダイナミックな殺陣や凄まじいモブシーンに結実している。
 ストーリー的には未だ端緒に着いたところに過ぎないので、続編の出来る可能性は十分にあるが、多分ヒット次第で決まるのだろう。アクションを華麗にみせる山崎賢人と吉沢亮の頑張りに加え、長澤まさみや橋本環奈の意表を突くキャラクターも楽しい。仇役を好演する本郷奏多をはじめ、満島真之介、高島政宏、要潤といった顔ぶれも中国大地にみごとに溶け込んでいる。

 歴史を知らずとも面白い、上映時間いっぱい楽しませてくれるエンターテインメント。こういうスケールの大きな作品がどんどん生まれるといい