『スカイスクレイパー』はドウェイン・ジョンソンならではの超絶アクション・エンターテインメント!

『スカイスクレイパー』
9月21日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
配給:東宝東和
©Universal Pictures
公式サイト:http://skyscraper-movie.jp/

 ロック様ことドウェイン・ジョンソンの進撃が止まらない。今年に入って『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』、『ランペイジ 巨獣大乱闘』に続いて本作と、立て続けに公開され、いずれもロック様の個性が存分に活かされている。
 ふりかえれば、プロレス団体WWEの王者として君臨していた彼が2001年に『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』で劇映画デビュー。シーンこそ多くなかったが、演じたスコーピオン・キングのイメージが鮮烈で、翌年にはスピンオフ作品『スコーピオン・キング』が製作され、映画俳優の道を突き進むことになる。
『ワイルド・タウン/英雄伝説』といったシンプルなアクションから『ウィッチマウンテン/地図から消された山』や『センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島』などのファミリー・エンターテインメント、さらにはアニメーションの『モアナと伝説の海』で声の主演ばかりか歌まで披露してみせた。コメディからシリアスまで、鍛え上げた肉体に匹敵するほどの多才ぶりを発揮している。
 よりメジャーになったのは『ワイルド・スピード EURO MISSION』でルーク・ホブス捜査官を演じてからのことだ。ひたすらタフな肉体の裡に情を秘めたこのキャラクターはたちまち人気爆発。以降のシリーズ作品が大ヒットを連発するなか、ロック様は欠くことのできない一員となっている。
 ロック様の魅力はまずもって肉体の圧にある。激しい戦い、災難でもびくともしない強靭な肉体。下手をするとカリカチュアになりかねない、かろうじてギリギリのところで留まっている。その点ではかつてのアーノルド・シュワルツェネッガーを想起する存在ともいえるが、ロック様の方が顔立ちがいいし、ユーモラスな人間味に溢れている。
 この死にそうもない肉体の持ち主を軸に、製作者たちはとてつもないカーチェイスや獣の大群、さらには巨獣から災害までさまざまな困難を設定した作品をつくりあげてきた。見る側はロック様なら困難をクリアできると信じている。観客が安心していられるヒーローなのだ。容姿の説得力。彼の作品の人気の秘訣はここにある。
 本作でロック様が挑むのは、高さの恐怖である。目もくらむ240階建て超超高層ビルを舞台に、大火災、テロリストを相手に戦う。しかも火災のなかには妻と子供が彼の助けを待ち望んでいるのだ。
 そもそもの発想は『セントラル・インテリジェンス』でロック様と仕事をしたローソン・マーシャル・サーバーが愛する『ダイ・ハード』と『タワーリング・インフェルノ』を現代の味つけで融合したアイデアだった。この企画にロック様が飛びついて、マーシャル・サーバーが脚本・監督・製作。ロック様もに製作に名を連ねることで実現に至った。
 共演は『スクリーム』シリーズのネーヴ・キャンベル、『ゴースト・イン・ザ・シェル』のチン・ハン、『フライト・リミット』のパブロ・シュレイバーといささか地味だが、ロック様に対抗するのは高さ1キロメートルの巨大ビル。炎と高さのサスペンスでぐいぐいと押しまくる仕掛けだ。

 ある事件で負傷し義足となったため、FBI人質救出部隊を退職したウィル・ソーヤーは、セキュリティ・コンサルタントとして妻と2人の子供とともに幸せに暮らしていた。
 彼が依頼されたのは香港に新たに建設された240階建て、高さ1キロに及ぶ超高層ビル、ザ・パールのセキュリティ・システムのチェック。ソーヤーは妻と子供2人を連れて香港を訪れ、ザ・パールに滞在しながら点検を終える。だが、突如、テロリスト軍団がザ・パールを襲撃する。
 彼らは爆弾テロを決行し中階層は炎に包まれる。逃げ場を失った妻と2人の子供は上階層に逃れた。セキュリティ・システムを武装軍団に掌握され、ソーヤー自身も警察に追われる身となってしまう。それでもソーヤーはたったひとりでビルを上る。火炎は強くなるばかり、義足をものともせずに戦い抜く――。

 超高層ビル大火災とテロリスト軍団との戦いが本作のヒーローに与えられた使命。今回のキャラクターは義足であるところがミソ。走ることは得意ではないが、義足である効用もストーリーに織り込まれている。ただひたすらよじ登り、跳び、縁にへばりつく。超高層ビルの外側を上がる、とことん高さを強調した映像的なスペクタクルで全編を貫いてみせる。
 俊敏な行動をとりにくい状況のなかで、いかにロック様らしい行動がとれるかがストーリーの知恵の絞りどころ。次々と見せ場を用意して飽きさせないのはさすがだ。監督のローソン・マーシャル・サーバーは『セントラル・インテリジェンス』とは一味違うアクション主導で、ロック様の魅力を引き出している。全編、無駄な説明はせずに、ひたすらスペクタクルとサスペンスで押し通す。このシンプルな戦略が潔い。みる者はロックの一挙手一投足に惹きつけられ、映画はジェットコースターのように冒頭から最後まで疾走する仕掛けだ。
 それにしても、どんなにシリアスな状況でもユーモアを忘れないあたり、なるほど『ダイ・ハード』のジョン・マクレーン的ではある。ロック様にはぴったりとはまっている。
 最近、顕著なのはアメリカ映画が中国を意識した設定となっていること。本作でも香港に舞台を据えることで、中国系俳優も数多く登場するし、香港の超高層ビル群を強くアピールしている。こうした布陣で臨むことで、莫大な映画人口を誇る中国本土の興行収入の保証となるのだろう。近年、さらにアメリカ映画は中国を意識した内容になることは疑いがない。

 ともあれ本作は、ロック様がファミリーマンの側面をアピールしながらヒロイズムを焼きつける。冒頭から一気呵成、最後まで楽しめる仕上がり。こういうロック様映画、明快なアクションはいい。