『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』は親しみやすい楽曲に心弾む、キュートなミュージカル続編!

『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』
8月24日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
配給:東宝東和
© 2018 Universal Pictures. All rights reserved.
公式サイト:http://mammamiamovie.jp/

 2008年に世界中で大ヒットしたミュージカル、待望の続編の登場だ。
 もともとステージから端を発した第1作『マンマ・ミーア!』の最大の特徴は、1970年代から80年代にかけて全世界を席捲した、スウェーデン発のポップグループABBAのヒット曲の数々で構成されていることだ。オリジナルのステージは1999年にロンドンで幕を開けて以来、日本のみならず世界170都市以上で上演され、ロングランを記録してきた。
 風光明媚なギリシャの小島を舞台に、小さなホテルを経営するシングルマザーのドナと結婚を間近に控えた娘ソフィ、そして3人の父親候補が繰り広げるユーモラスな大騒動のストーリー。この第1作の魅力はなんといってもキャスティングの妙にあった。
変幻自在の大女優メリル・ストリープを軸に、五代目ジェームズ・ボンドのピアース・ブロスナンに『英国王のスピーチ』のコリン・ファース、スウェーデン出身の性格俳優ステラン・スカルスガルドと、かなりひねったキャスティングで勝負。さらに後に『レ・ミゼラブル』にも出演した、輝くような金髪のアマンダ・セイフライト。『リトル・ダンサー』のジュリー・ウォルターズに『シカゴ』のクリスティーン・バランスキーと異色の顔ぶれだ。決して若くはない男女が懸命に歌って踊る。楽しげな姿をみていくうちに思わずリズムを取ってしまうのが、第1作の魅力だった。
 10年の歳月を経て製作された続編もオリジナル・キャストが再結集するだけでなく、ゴージャスなキャスティングが組まれている。ドナの若き頃を『シンデレラ』のリリー・ジェームズが演じるのをはじめ、『戦火の馬』のジェレミー・アーヴァイン、『マリアンヌ』のジョシュ・ディラン、『ロンドン、人生はじめます』のヒュー・スキナーといったフレッシュな男優陣に加え、『ブラック・レイン』のアンディ・ガルシア、ディーバであり『月の輝く夜に』などの映画でも活躍したシェールまでもが顔を出す。
監督は『17歳のエンディングノート』のオル・パーカー。『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』やその続編の脚本を手がけて評価された彼が本作の脚本も担当している。

 エーゲ海に浮かぶギリシャの美しい島で、母の夢だった新築ホテルをついに完成させたソフィは、オープニング・パーティの準備に励んでいたが、心のなかは穏やかではなかった。彼女はニューヨークに出張中の夫スカイとの仲に不安を感じていたのだ。ニューヨークで新たなキャリアを積みたい夫と、母の夢を成就したいソフィ。夫の成功を願う一方で、そばにいてくれない寂しさに苛まれていた。
 そんな折に、ソフィの妊娠が発覚する。自分を身ごもったときの母の気持ちに思いを馳せ、3人の父親たちとの出会いと別れを知りたいと思った。
 1979年、オックスフォード大学を卒業した若き日のドナは、親友のターニャとロージーと別れ、見聞を広めるひとり旅に出る。
ドナはパリの宿泊先のホテルでハリーという青年に出会い、一夜限りのつかの間の恋に落ちる。それからギリシャに赴き、ヨットの旅をしているビル、美しい島でサムと出会い、彼女は妊娠を知るとともにこの島に住む決心をしたのだ。
ホテルのオープニング・パーティの直前、嵐が襲来し、準備がすべて台無しとなる。ドナの旧友ターニャ、ロージー、そして島に住むサムが心配するなか、思わぬサプライズが待ち受けていた――。

 娘ソフィのオープニング・パーティまでの揺らぐ心情と、母ドナの若き日の冒険が並行して綴られる。希望に満ちたドナの恋の日々がパリ、ギリシャを背景にドラマチックに紡がれ、悩める娘ソフィの日々を和ませる展開となる。母の行動に思いを馳せることで、娘は自らが母になることを実感するに至る。オル・パーカーの演出は深刻になりすぎることもなく、ヒロインの人生の選択、母になる決断の瞬間が映像に好もしく綴っている。
 もちろん、降り注ぐ陽光とどこまでも青い海、穏やかな人情の島には、笑いと爽やかな動がよく似合う。明るく、ユーモアたっぷりに歌い、踊るのが本作の最大の魅力だ。
 それにしてもABBAの楽曲はすばらしい。メンバーであるビョルン・ウルヴァースとベニー・アンダーソンが生み出した楽曲はいずれも親しみやすく、心が弾む。どんなシーンであっても、楽曲が流れると映像が輝きを帯びるのだ。「ダンシング・クィーン」に「悲しきフェルナンド」、「恋のウォタールー」、「落ち葉のメロディ」、「マンマ・ミーア!」などなど、おなじみのメロディが画面に横溢し、みる者をハッピーな気分に誘う。第1作もそうだったが、ABBAの音楽が最大の功労者。リズミカルで時に哀愁を帯びたメロディが映像の力を倍加させている。

 出演者では若き日のドナに扮したリリー・ジェームズが熱演。溌溂とした個性を披露しているが、出番の少ないメリル・ストリープは登場するだけで画面をさらう。オーラが違うし、いつもながら歌唱力も抜群だ。軸となるソフィ役のアマンダ・セイフライトは本作では妻であり母になるというシリアスな心情を表現する役割。共感を呼ぶ演技をみせてくれる。
嬉しいのはドナの母親役でシェールが客演し、変わらぬ容姿(!?)と歌声を聞かせてくれること。アンディ・ガルシアがホテルの支配人役で出ていることが最後に明らかになる仕掛けとなっている。もちろん、ピアース・ブロスナン、コリン・ファース、ステラン・スカルスガルドも軽妙に場を盛り上げるし、ジュリー・ウォルターズとクリスティーン・バランスキーもコミカルに徹している。

 ラストのフィナーレでキャストが勢揃いすると、思わず胸が熱くなる。ミュージカルの醍醐味を満喫できる仕上がり。ABBAの楽曲に慣れ親しんだ世代は感涙必至だ。