『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』は躍動するバトルシーンの連続で圧倒するアクション・エンターテインメント!

 マーベル・コミックのヒーローたちが一堂に介する“アベンジャーズ”シリーズ最新作はとことんアクションの綴れ織りで疾走する、パワフルな意欲作だ。
 マーベルのスーパーヒーローたちを同一の世界観でクロスオーバーさせる“マーベル・シネマティック・ユニバース”という発想のもと、アイアンマンをはじめ、ソー、キャプテン・アメリカ、スパイダーマン、ドクター・ストレンジ、ブラックパンサー、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー、ブラック・ウィドウ、ファルコン、ハルク、ウォー・マシン、ヴィジョン、スカーレット・ウィッチが集結。これだけのヒーロー、ヒロインが力を合わせて戦うということは、敵が想像を絶する能力の持ち主であることの証明。宇宙に君臨する最強最悪の存在サノスとその部下たちがアベンジャーズの前に立ち塞がり、彼らが必死の戦いを繰り広げる展開となっている。
 マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギが2008年の『アイアンマン』から“マーベル・シネマティック・ユニバース”構想を打ち立てて10年。多くのヒーロー・ヒロインたちを映像化してきたが(全18本)、当初から本作の原作となるコミック「インフィニティ・ガントレット」を映画化したいとの思いがあったのだとか。まさに究極のバトル・ムービーの誕生となった。
 脚本は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』に続き、クリストファー・マルクスとスティーヴン・マクフィリーが担当。冒頭から最後までアクションに次ぐアクション。それでいながら、各キャラクターの心情を浮き彫りにするという難事に挑んでいる。監督は『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』を手がけたアンソニーとジョーのルッソ兄弟。本作では問答無用のアクションで最後の最後まで押しまくる。まことヴィジュアル・インパクトに富んだ映像が圧巻だ。
 もちろん、ヒーロー大結集とあって、出演者は豪華絢爛。アイアンマン役のロバート・ダウニーJr.を筆頭に、クリス・エヴァンス(キャプテン・アメリカ)、クリス・ヘムズワース(ソー)、トム・ホランド(スパイダーマン)、マーク・ラファロ(ハルク)、スカーレット・ヨハンソン(ブラック・ウィドウ)、ベネディクト・カンバーバッチ(ドクター・ストレンジ)、クリス・プラット(スター・ロード)、チャドウィック・ボースマン(ブラックパンサー)、ポール・ベタニー(ヴィジョン)、エリザベス・オルセン(スカーレット・ウィッチ)など多士済々。グウィネス・パルトロウ、ベニチオ・デル・トロ、サミュエル・L・ジャクソンも顔を出す。さらに声の出演でヴィン・ディーゼルとブラッドリー・クーパーなどが参加している。
 肝心の敵サノスには『ボーダーライン』などの個性派ジョシュ・ブローリンが起用されている。サノスに関しては『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』にも登場していた。彼の凄まじい能力、圧倒的な力、理念、心情が本作でようやく明らかになる。

 タイタン人のサノスは宇宙で蠢く悪の背後に常に存在していた。彼の目的は宇宙を自分の信じる姿に変えること。数が増え続ける宇宙中の生物を半分に減らせば、それぞれの星の平和と安全が保てると信じ、彼は行動してきた。
 今、サノスは凄まじいエネルギーを秘めた6つのインフィニティ・ストーンを手に入れようと行動を起こした。多くの星を毒牙にかけながら、地球にあるストーンを奪うべく指令を出した。その行動を通してサノスは育ての娘と再会し、野望の実現のためにつらい決断を余儀なくされる。
 地球ではニューヨークに宇宙船が来襲。ストーンのひとつを持つドクター・ストレンジと偶然、現場にいたトニー・スターク(アイアンマン)、スパイダーマンは全力を尽くして戦うが、敵は度をこして強かった。
 スタークの危機の知らせとともに、彼に反目し逃亡していたキャプテン・アメリカはヴィジョンの体内にあるストーンを護るべく、ブラックパンサーの王国のワガンダに向かい、最新の防御シールドを誇る王国で敵を迎え撃とうとする。だが、サノス軍は圧倒的に強力だった――。

 冒頭にアスガルドの宇宙船が破壊されてソーが痛めつけられるなど、サノスのとてつもない力が示されてからは一気呵成、ヒーローたちの激闘が綴られていく。サノスには明解な目的意識があり、いささかの迷いもなくインフィニティ・ストーン奪取に邁進しているが、アベンジャーズは激しい襲撃の受けにまわることを余儀なくされる。そのことと次第はネタバレになるといけないので、作品をみていただくしかないが、ポスターのコピー「最強の、終わりへ――」は内容をよく表している。
 ヒーローたちはそれぞれに戦いを強いられ、全力を出し切るが、それが勝利とは限らないのだ。この10年、18作が描いてきた強さの誇示がある意味で覆される。こうした展開で勝負した勇気に脱帽したくなる。全編、本当のサプライズが散りばめられている。しかも最後はあっと驚く幕切れが用意され、次作を必ずみたくなる。初期から、この展開を想起していたというケヴィン・ファイギには脱帽するしかない。
 本作は“アベンジャーズ”と付されているが、真の主役はサノスである。単なる邪悪ではなく、彼なりの倫理と理想を持っている。彼の圧倒的に無慈悲な殺戮は宇宙の摂理を護るための行動であり、邪悪と片づけられるものではないのだ。そんな彼が理想実現のために辛い選択をするという、人間的な感情を持っていることを証明するシーンも織り込まれている。どす黒い欲望の持ち主とは一線を画した悪役ぶりなのだ。
 ルッソ兄弟はサノスを魅力的に描きつつ、アベンジャーズの必死の応戦をパワフルに紡ぐ。これまでアベンジャーズが培ってきたものが破壊され、彼らの人となりがくっきりと浮き彫りになる。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々もここではシリアスな局面に立たされ、ヒーローとしての資質を問われることになる。

 豪華な顔ぶれの出演者が惜しげもなく画面に登場し、戦っては消えていく。アクション、アクション、アクション。これはまさしく戦争映画だ。バトルシーンの迫力に圧倒されまくる。ロバート・ダウニーJr.とベネディクト・カンバーバッチの皮肉なやりとりや、アライグマのロケットや“木”のグルートのキュートさも掬い上げられて、アクションの間に織り込まれる。実に巧みに練りこまれた展開のなか、各ヒーローのキャラクターも過不足なく披露されている。

 最初から最後まで映像の迫力に翻弄されるばかり。マーベルのヒーローたちを少しでも好きなら、絶対に見るべき作品といいたい。