『ワンダーウーマン』はアメリカン・コミックの代表的スーパーヒロインの魅力が炸裂した全米大ヒット作!

『ワンダーウーマン』
8月25日(金)より全国ロードショー 3D/2D/IMAX
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
公式サイト:wwws.warnerbros.co.jp/wonderwoman/

 

アメリカン・コミックの映画化作品は増える一方で、さまざまな個性、意匠のヒーローがスクリーンで妍を競っている。とりわけマーベルとDCの2大コミック出版社が積極的に実写映像戦略に舵を切ってからは、一気にアメリカン・コミック・ヒーローが映画館に溢れることになった。

本作はDCコミックが誇るスーパーヒロインの実写映像化である。ワンダーウーマンはスーパーマン、バットマンと並んで、とりわけ人気の高いキャラクターで、実写版としてはリンダ・カーターがヒロインを演じたテレビシリーズが1970年代後半に日本でも放映されたことがある。

このスーパーヒロイン、既に2016年の『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』にも顔を出していた。マーベル・コミックの“マーベル・シネマティック・ユニバース”と同じように、ヒーローたちが同じ世界観のなかで活動する“DCエクステンデッド・ユニバース”の一環として登場したもので、突然、現われたワンダーウーマンの勇姿はまことに衝撃的だった。その時点から、本作はファンに待望されていた。

本作は『マン・オブ・スティール』や『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』などを手がけ、DCの映像化作品の中心を担ってきたザック・スナイダーが妻のデボラ・スナイダーとともに製作を担当。なおかつ『PAN~ネバーランド、夢のはじまり~』の脚本で知られるジェイソン・フュークス、テレビの世界で活動してきたアラン・ハインバーグとともに原案を練り上げた。

なによりの注目は監督にパティ・ジェンキンスが抜擢されたことだ。ジェンキンスはシャリーズ・セロンにアカデミー主演女優賞をもたらした2003年の『モンスター』の脚本・監督として、一躍話題となった存在。以降は「THE KILLING~闇に眠る美少女~」をはじめとするテレビシリーズを中心に手がけてきた。

ワンダーウーマンのテレビシリーズが好きだったという彼女はハインバーグがまとめあげた脚本を得て、凛として美しく、媚びない女性像をスクリーンに焼きつけてみせた。清潔感があり、色香もさりげなく香り立つスーパーヒロイン。ここまで爽やかな描き方は男性監督には難しい。女性も支持するキャラクターを創出した点でも、ジェンキンスの起用は成功だったといえる。

もちろん、ワンダーウーマンを演じたガル・ガドットのすばらしさは特筆に値する。2004年度のミス・イスラエルに選ばれ、モデル、女優の道を歩んだ32歳。2015年の“世界で最も美しい顔100人”のひとりにも選ばれている。『ワイルド・スピード MAX』のジゼル役で映画デビューし、世界的に認知されるようになった。

身長が178㎝、イスラエル生まれだけに兵役も経験している。兵役時代に身体で覚えた戦闘トレーニングがスーパーヒロインの殺陣、身のこなしに大いに役立ったとのこと。ジェンキンスの演出のもとで、純で強いキャラクターをくっきりと演じ切ってみせる。

彼女を支えて、『スター・トレック』シリーズのクリス・パインをはじめ、『声をかくす人』のロビン・ライト、『ヒッチコック』のダニー・ヒューストン、『シャンドライの恋』のデヴィッド・シューリス、『ラストミッション』のコニー・ニールセンなど、個性的な俳優が集結している。

 

外界から隔絶されたパラダイス島に女性だけのアマゾン族が暮らしていた。常に鍛錬を欠かさない女性だけの世界で、プリンセスのダイアナは日々、武芸に勤しみ、自分の持つ特殊な力を意識するようになっていた。

しかし、遮断されていたはずの外界から小型飛行機に乗った男が島に闖入してきた。発見したダイアナにとっては初めて目にする男性。スティーヴと名乗る彼の口から世界が第1次大戦の最中にあり、ドイツ軍が開発中の毒ガス爆弾によって世界に破滅の危機が迫っていることが知らされる。

ダイアナは戦いの神アレスが戦争に関与していると確信し、外界に出てドイツ軍の計画を阻止したいと、母である女王に申し出る。一度島を離れると二度と戻ってこられないのがアマゾン族の掟。女王は退けるが、ダイアナの意志は固い。“ゴッドキラー”と呼ばれる剣と盾、鎧を纏って、スティーヴとともに島を離れる。戦下のロンドンに到着したふたりは、毒ガス爆弾阻止作戦を実行に移す。戦地に着いたダイアナは戦争の醜悪な貌に触れ、アレスとの戦いに自らの持つ特別な力が解き放たれる――。

 

第1次大戦下という男中心の時代に飛び込んだダイアナは自分の意志を貫き、弱者を救おうと奮戦する。ダイアナとスティーヴとの淡い恋をさりげなく綴りつつ、自由と正義を信じ、理想を求める彼女の姿をユーモアを交えつつ、凛々しく紡ぐ。荒唐無稽な設定であっても、パティ・ジェンキンスはリアルな眼差し、グイグイ惹きこむ語り口を貫き、映像がくっきりと浮かび上がってくる。まこと、スーパーヒロインとして素直に称えたくなる輝きを放っているのだ。

男主導社会で歩んできた現実世界は戦いの止むときがない。この事実に思い至ると、女性の持つ強さが世界を変えるという儚い希望にすがりたくなる。ワンダーウーマンの凛とした活躍をみると、思わずそんな感慨を抱いてしまう。今年は『エル ELLE』や『女神の見えざる手』など、タフな女性主導の作品が多く公開されているが、爽やかさにおいては本作が群を抜いている。これまでの“DCエクステンデッド・ユニバース”作品群のなかでも屈指の仕上がり。ザック・スナイダー監督作品を超えたとの声もあるほどだ。

ジェンキンスは、戦闘シーンはどこまでもリアルに紡ぎ、クライマックスのスペタクルではケレンたっぷり。全編にメリハリをつけつつ、バランスがいい。本作は公開第1週に、全米で1億50万ドルの興行収入を記録した。この数字は女性監督としては史上初の数字という。ヒットばかりか、批評家からも絶賛を浴びているのだから大したものだ。まさしく、本作が男女を問わずに支持された証明である。

 

もちろん、ヒットはガル・ガドットに負うところが大きい。フィジカルの逞しさを内包しつつ品のある美貌で惹きつける。華やかな容姿が嫌味ではなく映像に焼きつけられている。動き、仕草もふくめ、彼女の存在感が作品の魅力を高めている。

 

ガドットの不幸は故国がイスラエルであることで、アラブの一部の国では作品をボイコットする声も挙がったという。そうした動きはものともせずに世界の興行収入は8億ドルに届かんとするヒットとなっている。もちろん“DCエクステンデッド・ユニバース”の一員として、今後もワンダーウーマンの勇姿が楽しめる。まずは一見をお勧めしたい。