『ジョン・ウィック:チャプター2』は理屈抜き、銃撃戦の迫力で疾走するクライム・アクション!

『ジョン・ウィック:チャプター2』
7月7日(金)より、TOHOシネマズ スカラ座/みゆき座ほか、全国ロードショー
配給:ポニーキャニオン
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公式サイト:http://johnwick.jp/

 

考えてみると、キアヌ・リーヴスは俳優としては恵まれた軌跡を歩んでいないが、忘れかけた頃にエポックメーキングな作品に出会う点で傑出している。

1989年のおバカなコメディ『ビルとテッドの大冒険』で注目されて、1991年の『マイ・プライベート・アイダホ』ではリヴァー・フェニックスと美貌を競い、ファンを増やす。だが『ドラキュラ』や『から騒ぎ』、『リトル・ブッダ』などの異色作に出演したが、リーヴスに話題が及ぶことが少なく、今ひとつ何がやりたいのか分からない印象だった。

印象が鮮明になったのは1994年、『スピード』でSWAT隊員ジャック・トラヴェンを演じてからだ。この作品でスターダムを駆け上がったサンドラ・ブロックの演技を受けつつ、体当たりのアクションを披露。たちまち勢いのあるアクションスターのイメージをみる者に焼きつけた。

だがリーヴスは続編の出演を断り、『雲の中で散歩』や『フィーリング・ミネソタ』、『死にたいほどの夜』など、ラヴストーリーやドラマに出演。アクションスターのイメージよりも、俳優としてのスキルを上げようと考えた節がある。

リーヴスが世界的な脚光を再び浴びたのは1999年から2003年に至る『マトリックス』3部作からだった。仮想現実世界で戦うヒーロー、ネオに扮した彼はカンフーの殺陣、ワイヤーワークを駆使しながら、これまでに例のなかったアクションをフィルムに焼きつけてみせた。

だが、その後も、あえてアクションに固執することなく、『サムサッカー』、『地球が静止する日』、『47RONIN』、さらに監督も務めたカンフー映画『ファイティング・タイガー』や、製作を引き受けたドキュメンタリー『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』などなど、興味のおもむくまま、アクションに留まることなくさまざまなジャンルに手を伸ばした。軽々と、あらゆるジャンルで個性を発揮できる俳優。これがリーヴスの目指しているスキルなのだろう。

 

本作は題名が示す通り、2014年の『ジョン・ウィック』の続編である。リーヴスが続編に出演するのを快諾したことは、いかに彼がこのキャラクターを好いているかの証明。脚本のデレク・コルスタッドの生んだ、孤独を愛す伝説の元殺し屋のキャラクターは、なるほどリーヴスの求道者然とした容姿にぴったりとはまっている。

本作も『マトリックス』をはじめとするアクションのスタント、スタントコーディネーターを担当してきたチャド・スタエルスキが、前作に続いて監督を引き受け、とことんアクションの連続で押し通している。今回はニューヨークにローマと舞台が広がり、ジョン・ウィックの銃撃戦はさらに激烈なものとなる。

共演は『スーサイド・スクワッド』のコモン、『マトリックス』でおなじみのローレンス・フィッシュバーン、『輝ける青春』のリッカルド・スカマルチョ、『バイオハザード:ザ・ファイナル』のルビー・ローズ、マカロニ・ウエスタンの名優フランコ・ネロなど多士済々。前作からの引き続きでジョン・レグイザモ、イアン・マクシェーンも顔を出す。

千葉真一のアクション映画が子供時代に大好きだったというリーヴスの趣味が横溢した仕上がりとなっている。

 

ニューヨーク最大のロシアン・マフィア組織を殲滅したジョン・ウィックは、再び静かな生活を取り戻したかにみえたが、わずか数日後に、イタリアン・マフィアのサンティーノ・ダントニオの訪問を受ける。

サンティーノは殺人の依頼にきた。反故にはできない。ウィックが裏社会から足を洗うときに、サンティーノと交わした血の契約があったからだ。この契約のもとでは、どんな依頼も断ってはならない。

それでも静かな生活を望むウィックだったが、サンティーノの依頼を引き受けることになる。ミッションはイタリアン・マフィアの党首でサンティーノの実姉ジアナの暗殺。ウィックはイタリアに渡り、周到な準備のもとで契約を履行する。

ウィックの復讐を恐れるサンティーノは、ジアナ殺しの罪を着せるべく刺客を送り込み、さらに世界中の殺し屋たちに向かってウィック殺しに700万ドルの賞金をかけると発信した。かくしてウィックはひと時も気を緩められない状況に追い込まれていった――。

 

どこまでもストーリーはシンプルで分かりやすく、いかにヒーローがスタイリッシュに敵を倒していくかが描かれる。この潔さが人気の理由だ。キアヌ・リーヴスはひたすら格好良く、ものに動じないクールな容貌で押し通すし、前作よりも製作費が倍増した効果は、イタリア・ローマの華麗なる景色に活かされている。格闘の振り付けは前作同様、ジョナサン・エウゼビオが担当。長年、スタントコーディネーターを任じてきたチャド・スタエルスキとの呼吸もぴったりで、緊迫感に溢れ、美しいアクションを画面に焼きつけている。

もちろん、銃撃戦、格闘シーンの迫力のみならず、カー・アクションも倍増。スタエルスキの問答無用の語り口で、ラストまでサスペンスを盛り上げる。ローマ、ニューヨークの街の臨場感を巧みに盛り込みつつ、息の抜けないサスペンスが展開する。

こうしたアクションに堅いことをいうのは野暮というもの。ヒーローがいかに死体の山を築くかを楽しめばいい。聞けば、本作がヒットを飾ったことで、第3弾も製作が決まったのだとか。アクション好きにとってはめでたい限りだ。

 

もちろん、ウィック役のキアヌ・リーヴスは前作以上に格好がいい。ローマでは仕掛けの施したイタリアン・ファッションを着こなして武装した敵を次々と倒すし、ニューヨークでは見知らぬ殺し屋たちの襲撃をギリギリのところで撃退していく。彼の寡黙さ、クールな表情がキャラクターをさらに魅力的なものにしている。

それにしてもギャングや殺し屋のキャラクターは誰が演じても惚れ惚れさせられる。ボディガード兼殺し屋役のコモンがアクションをこなせることを証明すれば、ニューヨークのギャングのボス役のローレンス・フィッシュバーンが貫録たっぷりに演じ切る。サンティーノ役のリッカルド・スカマルチョが卑劣に徹すれば、ルビー・ローズはサンティーノの殺し屋をパワフルに表現。ゲスト格のフランコ・ネロは殺し屋組織ローマ支部長役でさらりと顔を出す。いやいや、思わずニヤリとさせられる。なかなかのキャスティングである。

 

暑い夏にひたすら痛快さ追求、派手なアクションを堪能する。モラルなどはお呼びでない。こういう振り切ったクライム・アクションは応援したくなる。