『疾風スプリンター』はサイクリストの夢と矜持を描いた、熱血ロードレース・エンターテインメント!

『疾風スプリンター』
1月7日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
配給:エスパース・サロウ
© 2015 Emperor Film Production Company Limited All Rights Reserved
公式サイト:http://shippu-sprinter.espace-sarou.com/

 

 今、自転車レースが熱い。

 最近では“ツール・ド・フランス”をはじめ、テレビ中継が行われるようになって、飛躍的にサイクリストの数も増え、日本でもレースが幾つも行われるようになった。  

 自転車レースを題材にした映画といわれて、まず頭に浮かぶのが1979年のピーター・イェーツ監督作『ヤング・ゼネレーション』や1985年のジョン・バダム監督作『アメリカン・フライヤーズ』(劇場未公開)あたり。ともに脚本をスティーヴ・テシックが担当していて、『ヤング・ゼネレーション』はアカデミー脚本賞に輝くほど評価された。

 アニメーションでは2003年に高坂希太郎が監督を務めた『茄子 アンダルシアの夏』が発表され、好評を博したのも記憶に新しい。さらに渡辺航の人気コミックをアニメーション化したテレビシリーズ「弱虫ペダル」(劇場版も制作された)もファンを増やした。認知度の高まりとともに、実在の自転車ロードレース選手ランス・アームストロングを題材にしたスティーヴン・フリアーズ監督作『疑惑のチャンピオン』も2016年に公開されている。

 

 知力、体力、闘争心、戦略が求められるロードレース。その醍醐味を満喫させてくれるのが本作である。なにせ監督が『密告・者』や『激戦 ハート・オブ・ファイト』などで知られるダンテ・ラム。聞けば監督自身もサイクリストということで、とことんリアルにロードレースを切り取り、レーサーたちの心情に肉薄している。

 ダンテ・ラムの原案をもとに『アイスマン』のラム・フォン、『傾城之泪』(日本未公開)のシルヴァー、そしてラム自身が練りこんで脚本化。単にレースの興奮を伝えるばかりでなく、レーサーたちの葛藤、友情、愛を描いた正統派スポーツ映画となっている。

 なによりも本物の迫力を焼きつけたいダンテ・ラムは、主要キャストに至るまで厳しいトレーニングを要求。過酷な状況下での撮影に80人が負傷し、そのうち6人は骨折したという。監督は自転車レース自体が危険と隣り合わせといいきるが、俳優にとってはたまったものではない。ともあれ、その迫力はきっちりと映像に焼きつけられている。

 出演は台湾生まれで台湾・香港で活動する『激戦 ハート・オブ・ファイト』のエディ・ポンに、『サンザシの樹の下で』が印象的だった中国・西安生まれのショーン・ドゥ、『墨攻』が映画初出演だった韓国・ソウル生まれの歌手・俳優のチェ・シウォン、中国・赤峰市生まれの女優ワン・ルオダンなど、アジア全域に目配りの利いたキャスティングである。

 妥協のない映像が自転車ロードレースの迫力を存分に堪能させてくれる。本作を見たサイクリストが惜しみなく絶賛する。圧巻の仕上がりである。

 

 自転車ロードレースの強豪“チーム・レデイエント”にチウ・ミン、チウ・ティエンのふたりが加入する。実力はあるが傲慢なチウ・ミン、目立つタイプではないが率直なチウ・ティエンはともにライバルとして意識する。ふたりはチームのエース、チョン・ジウォンのアシストとして実力を発揮。台湾各地の連戦で存在感を高めていた。

 ふたりは、大病からの復帰を図る女性サイクリスト、シーヤオと出会い、それぞれ恋心を抱く。まったくタイプの異なるチウ・ミン、チウ・ティエンの間で、シーヤオの心は揺れ動き、ふたりはレース以外でもライバルであることを意識した。

 だが、“チーム・レデイエント”は資金難に陥り、運営が立ち至らなくなる。チョン・ジウォン、チウ・ミン、チウ・ティエンはそれぞれ別のチームに所属し、エースとして競い合うことになるが、さらなる壁、葛藤が待ち受けていた――。

 

 プロのロードレースの迫力を縦横無尽に焼きつけたダイナミックな映像にまずもって惹きこまれる。ダンテ・ラムは撮影のために高雄市に要望して、13キロの道路を封鎖。10台のカメラを全面的に配置し、ヘリコプターからの空撮も駆使して、完璧にレースを再現してみせたのだから恐れ入る。撮影は台湾各地、香港、中国、韓国、イタリアに及び、それぞれの地域を活かしたレース・シーンが繰り広げられる趣向。アクションの匠らしく、危険に満ちたレースを切り取り、ぐいぐいとサスペンスで引っ張っていく。なによりもここまで超ド級のレース・シーンで押し切った作品も珍しい。

 その分、ドラマ部分はシンプル。若い選手ふたりの公私ともになる競争心を軸に、二人の人間的な成長を紡ぎだす。慢心ゆえの失敗、ドラッグ問題、エースでいることの重圧がさらりと織り込まれ、純な若者が傷つきながらも生きていく姿が浮き彫りになる。ここに登場する障壁はある意味で自転車ロードレーサーには限らない普遍的なものながら、ダンテ・ラムの演出はリアルでありながら爽やかさを維持し、エンターテインメントとしてのツボは外していない。

 

 俳優たちはいずれも特訓を課して、アスリートの肉体に仕上げた。チウ・ミン役のエディ・ポン、チウ・ティエン役のショーン・ドゥ、チョン・ジウォン役のチェ・シウォンはいずれもレース・シーンで生傷を恐れず、ダイナミック失踪ぶりを披露してみせている。

 

 サイクリストでなくとも、迫力のシーンに快哉を叫びたくなる。ダイナミックでスリリング、自転車ロードレースの面白さをみごとに映像化した快作。一見をお勧めしたい。