『バイオハザード:ザ・ファイナル』は怒涛のアクションで綴る、超人気シリーズ完結編!

『バイオハザード:ザ・ファイナル』
12月23日(金・祝)より、丸の内ピカデリー、TOHOシネマズ日本橋ほか、世界最速ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:http://www.biohazard6.jp/

 

 1996年に日本初のゲームとして登場し、世界を席巻。シリーズ化された「バイオハザード」はゲームのみならず、小説やドラマCDなどに枝葉を広げていったが、もっとも話題を集めたのは実写映画シリーズだった。

 熱烈なゲームのファンだった、『モータル・コンバット』などで知られるポール・W・S・アンダーソンが製作、脚本、監督を引き受けて、2002年に第1弾『バイオハザード』を発表。アメリカをふくめ世界各国で支持されたことで、実写版もシリーズ化が決定した。

 ヒロインに抜擢されたのは、弟の影響でゲームのファンになったというミラ・ジョヴォヴィッチ。それまではリュック・ベッソン作品『フィフス・エレメント』や『ジャンヌ・ダルク』などで知られていたが、『バイオハザード』では事前にアクションの特訓を課し、ほとんどのアクション、スタントを演じてみせた。彼女の熱演はアンダーソンの気持ちを動かし、以降もヒロインを演じ続けることとなった(そればかりか私生活では結婚にまで至った)。

 シリーズは、巨大企業アンブレラ・コーポレーションが地下秘密研究所”ハイブ“で開発していたウィルスによって人間はゾンビ化し、世界的な規模で広がっていくという設定の下、”ハイブ“の唯一の生存者にして、記憶を失ったアリスが八面六臂の活躍をみせる展開。作品を重ねるごとに世界観は確固たるものとなり、スケールは広がっていった。これはすべての脚本を手がけたアンダーソンの功績といっていい。

 アメリカでは来年1月の公開となる本作は、シリーズの第6弾となる。題名にあるようにアリスの最後の闘いが繰り広げられることになる。日本発のアイデアである以上、どこよりも早く公開するのは当然との判断で、日本のヒットで弾みをつけたいとの戦略だろう。

 これまでの5作品で拡散したストーリーをどのように収斂させるか、アンダーソンの資質が問われるところだが、本作で彼が目指したのは原点回帰。すべてがはじまったところで、終わらせるのが王道とばかりに、本作のクライマックスの舞台は“ハイブ”に設定している。第1作にみなぎっていた閉塞感の恐怖を再び映像に盛り込む作戦。ホラー的な衝撃を押し出しながら、超絶なアクションとの相乗効果を狙っている。まこと、冒頭からアクション、アクションの連続。さらに恐怖演出も存分に仕掛けて、観客を翻弄していく仕掛けだ。

 もちろん、主演はミラ・ジョヴォヴィッチ。2015年に第2子を生んでから、撮影に臨んだというが、スタントやアクションの切れ味は満点。ハードなアクションをものともしない、凄味さえ宿した容姿は、第1作よりは多少、年輪を重ねた印象はあるが、まさに美しい戦士と形容すべきか。間違いなく、アクション・ヒロインとしての資質を120パーセント、発揮している。

 共演もイアン・グレン、ショーン・ロバーツ、アリー・ラターなど、シリーズのお馴染みの顔ぶれが顔を揃えるのに加え、日本で抜群の知名度、人気を誇るタレント、ローラが特別出演。ハードな女戦士役で登場する。

 

 世界の生存者が一握りとなってしまった人類とアンデッドとの戦い。アリスはひとりでアンデッドと戦っていたが、アンデッドを引き連れたアンブレラ・コーポレーションの装甲車に遭遇する。

 一度は捉えられたアリスだが、難なく脱出すると、ラクーンシティのアンデッドと戦う生存者たちの要塞に入り、かつてともに戦ったクレアと再会する。アンデッド、装甲車を向こうに回しての一大バトルが開始された。アリスたちは奇策を駆使して、敵を撃退する。

 だが、アリスはアンブレラ・コーポレーションのメインコンピュータ“レッドクイーン”に「人類には48時間の猶予しかない」と告げられたことから、その危機を脱するためには、すべての原点であるアンブレラ・コーポレーションの“ハイブ”に向かうしかないと悟る。

 アンデッド、地獄の番犬ケルベロスをなぎ倒しながら、アリスと仲間たちは“ハイブ”に入り込み、驚くべきアンブレラ・コーポレーションの陰謀の真相、さらには自分の出自を知るとともに、思いもよらぬ宿敵と対決する――。

 

 最終章とあって、いくつもの謎が明らかになっていく。アンデッドを生み出したウィルスが誕生するまでの経緯。これを活用しようとしたアンブレラ・コーポレーションの目的、“レッドクイーン”の正体。そしてアリスが何者であるのかも明らかになる。

 これだけの謎を観客に手際よく伝えるために、アンダーソンは本作のストーリーをシンプルに仕上げた。ダイナミックなアクションの見せ場でつなぎつつ、一気呵成にアリスをラクーンシティから“ハイブ”に向かわせ、そこで一気に謎解きに転じる。前半はアクションとスタント主導で突っ走り、クライマックスには、アリスのエモーショナルな部分が喚起される仕掛けだ。アンダーソンのツボを心得た語り口、いささか盛り込みすぎながら、シリーズの背景、ヒロインの真の意味での正体が解明されるので感慨もひとしおになる。

 しかもアンダーソンは南アフリカ、オーストラリア、アメリカ、ロシアなどにロケーションを敢行。ダイナミックなカメラワークを維持するため、あえて2Dカメラで撮影して、編集段階で3D映像に変えるコンバージョン方式を採用している。これまでのコンバージョン方式はむりやり3D映像にした感じがつきまとったが、アンダーソンは当初から3Dイメージを考慮した撮影にしたので問題はなかったとコメントしている。なるほど、実際に3D映像をみた感想をいうなら、違和感はなかった。

 

 出演者ではやはりジョヴォヴィッチの頑張りが群を抜く。本作ではアクションとスタントに加え、老けメイクも披露するのだが、詳細は見てのお楽しみだ。

 

 アクション、SF、ホラー、すべてのジャンルの醍醐味が満喫できる、理屈抜きに痛快な作品。正月に能天気に楽しむにはいい。