『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』は観客をイリュージョンの世界に誘う、犯罪アクションの続編!

『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』
9月1日(木)より、TOHOシネマズ スカラ座・みゆき座ほか、全国ロードショー
配給:KADOKAWA
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公式サイト:http://grandillusion.jp/

 

 2013年10月に日本でも劇場公開された『グランド・イリュージョン』は、マジック(イリュージョン)のテクニックを駆使したユニークな犯罪アクションとして、全世界で3億5千万ドルを超える興行収入を上げるヒットを飾った。

 マジックを使って銀行強盗を成功させたチーム“フォー・ホースメン”の華麗なる犯罪を痛快に描きつつも、観客をミスダイレクションし、あっと驚く幕切れが待ち受けている。『トランスポーター』で注目された監督ルイ・ルテリエの派手でスピーディな演出が功を奏し、まさに観客は騙される快感に包まれる仕上がりだった。

 ヒットすれば続編が生まれるのは世の習い。さらにスケールアップしたストーリーを擁して本作の登場となった。第1作の原案を担当したボアズ・イェーキン、エドワード・リコートの生み出したキャラクターをもとに、第1作の脚本を担当した『メン・イン・ブラック』のエド・ドロモンが『あなたは私の婿になる』のピーター・チアレリとともに、起伏に富んだストーリーを構築。ルテリエに変わって、『GIジョー バック2リベンジ』を手がけた中国系監督ジョン・M・チュウがメガフォンをとっている。

 また、本作ではマジック(イリュージョン)の第一人者、デヴィッド・カッパーフィールドが共同プロデューサーに名前を連ねている。マジックの専門知識を脚本段階からレクチャーし、ステージ上で展開するマジックのセッティングなどに尽力したという。この他にマジシャンのキース・バリーに加えメンタリストや催眠術師も参加。彼らの持つマジック(イリュージョン)のテクニックを使って、いかに観客をミスリードしていくかにこだわった。前作同様に、一見、ありえない状況を想定し、種明かしする展開。めまぐるしく二転三転するストーリーに翻弄され、まさに爽快に、最後の最後まで騙しつくす。

 出演は『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』での悪役ぶりも忘れ難いジェシー・アイゼンバーグ、『ハンガーゲーム』のウディ・ハレルソン、『ウォーム・ボディーズ』のデイヴ・フランコ、『アベンジャーズ』のマーク・ラファロ。さらにマイケル・ケイン、モーガン・フリーマンなどの第1作からの顔ぶれに加えて、『ハリー・ポッター』シリーズでおなじみのダニエル・ラドクリフ、『グリーン・ホーネット』でハリウッド・デビューを果たした台湾のスーパースター、ジェイ・チョウ。『ミーン・ガールズ』のリジー・キャプランまで、多彩な俳優たちが選ばれている。

 

 華麗なるイリュージョン・ショーの最中に、汚れた金を奪い、権力者の悪事を糾弾してヒーローとなった犯罪集団“フォー・ホースメン”が1年後、集結した。オールラウンダーのアトラス、メンタリストのマッキニー、カードマジックのワイルダー、そして女性マジシャンのルーラが加わっている。

 4人が狙うのはIT企業のオクタ社の不正の暴露。ニューヨークで行なわれるオクタ社のプレゼンテーションをジャックして、不正を暴く作戦だった。計画は円滑に進み“フォー・ホースメン”が登場する。だが、途中で何者かに逆ジャックされてしまう。何者かは4人の素性を明らかにしたばかりか、協力者の存在を暴いていく。

 あわてて4人は屋上から脱出するが、なぜか降りた先はマカオの中国料理店の厨房だった。

 そこに現れたのは天才的エンジニアのメイブリー。彼はオクタ社の開発した、あらゆるシステムにアクセス可能なコンピュータ・チップを盗むように強いる。渋々、引き受けたような顔をして、メイブリーを陥れようとする4人だったが、そもそも4人が再結集したのもメイブリーが操っていたのだった。

 なんとか体制を立て直そうと、4人は大晦日のロンドンでメイブリーとの最終決戦に乗り出していく――。

 

 騙される快感に浸りたいなら、本作はあまり予備知識を持たない方がいい。ストーリーは興をそがない最小限に抑えたが、どうにも説明不足は否めない。第1作をみている人には、“フォー・ホースメン”のキャラクターと協力者の関係、第1作で登場した伝説のマジシャンや大富豪がどのように絡むかが分かるが、本作だけだとちょいと辛い。本作をみる前に第1作を鑑賞しておくことが肝要である。つまりは2作品が綿密に繋がっているのだ。

 本作のキイワードは“父子”。ストーリーの核になると同時に、用意されているマジックを解くキイにもなっている。それにしても全編に散りばめられているマジック(イリュージョン)の数々には驚かされるばかり。ニューヨークで飛び込んだ脱出パイプの先がマカオだったなんていうマジックも、種明かしされるとニヤリとするしかない。マジックは基本的に単純な仕掛けなのだ。第1作、本作の主眼はマジック(イリュージョン)の手法を映像に持ち込んで、観客を欺くことにある。映像のなかで明らかにされるトリックの数々に口をあんぐりさせられたら、本作の存在意義は充分にある。

 チュウはスピーディな語り口に終始してクライマックスまで一気呵成。多少、乱暴なところもあるが、見せ場本位に盛り上げる。アメリカ生まれ、USCで映像を学んだ彼は、どこまでもアメリカ映画的な派手な演出を披露している。

 それにしても中国の進出には目を見張るものがある。本作はアメリカ、中国、イギリス、カナダの合作。さればこそマカオが舞台に選ばれ、ジェイ・チョウも顔を出す仕儀となる。アメリカ映画の中国に対する気の使い方の発露だ。

 

 出演者はアイゼンバーグ、ハレルソン、ラファロを筆頭に快調そのもの。メイブリーに扮したラドクリフは今後、こういう歪んだキャラクターが多くなるかもしれないが、英国俳優の信条である役を選ばない姿勢は評価したくなる。フリーマン、ケインはなるほど起用の理由が本作で納得できた。豪華なキャスティングがやはり魅力である。

 

 劇場のシートに身を置いて、数々の騙しに感嘆する。本作の醍醐味はここにある。聞けば第3弾が検討されているとか。楽しみである。